「モジャンボ、エナジーボールです!」


「ガブリアス、ドラゴンクロー!」



私たちのバトルは、引き続き熱戦を繰り広げていた。
ガブリアスは、黄緑色の光を放つエナジーボールを切り裂くように腕で受け止めると、スピードを落とすこともなくそのままこちらへと突っ込んできた。
禍々しい光と鋭い爪で引っ掻くような音が響けば、土煙でモジャンボの様子がよく見えなくても予想は付く。
地響きと共に、私のモジャンボは目を回し後に倒れ込んだ。
そして、彼女のガブリアスもがくりと足元から崩れ落ちて倒れる。
どちらも体力は残りわずかだった。
確実に仕留めるなら、相打ち覚悟の判断も悪くない。



「…ここまでは想定内です」



大丈夫、と最後の1匹が入ったモンスターボールをナマエさまは握りしめた。
私としては予想外だった。
ゲンガーもガブリアスも、桁違いに強くなっている。
おそらくその中にいる、あのポケモンも。
そしてなにより、ナマエさま自身がとても強くなっていた。
相性や選択する攻撃は勿論だが、彼女はポケモンの技を攻撃にも防御にも上手く使い分けてくる。
更には、こちらの攻撃すらも利用して優位に立とうとするその力量。
それは想像を遥かに超えた強さだった。
ポケモンのタイプも、相性も知らずにいた頃の彼女とは比べものにならない。



「…強くなられましたね」


「それでもノボリさん達にはまだ余裕が見えます」



彼女が力一杯投げたボールから飛び出してきたポケモンは、オヤブンにも勝る大きさのヌメルゴンだった。
やる気は十分といったように、雄叫びを上げればビリビリと空気が振動する。
彼女達の気迫を感じ取った私の手元のボールが、震えるのがわかった。
ああ、やはりポケモン勝負は、こうでなければつまらない。



「純粋に、貴女様とのポケモン勝負が楽しいのでございます」


「そうですか…でも、私は負けるわけにはいかないので」



私の投げたボールから出てきたグライオンを見たナマエさまは、息を呑んでそう言った。
何か、強い意志を感じるほどに。
だが、私とて負けられないのは同じである。



「グライオン、だいちのちから!」


「たてこもれ、ヌメルゴン!」



いつかのバトルと同じ戦法。
つばめがえしを当てようとすると、カウンターの如く放たれるハイドロポンプ。
気付いていないとでも思っているのだろうか。



「その手にはもう乗りません」



煙幕の向こう側で、ふと笑ったナマエさまが一瞬だけ見えた。
つばめがえしのタイミングを伺い、空を駆け回るグライオンをハイドロポンプとれいとうビームで追尾するよう、彼女はヌメルゴンに指示をするも、その攻撃を易々と受けるほど私のグライオンは遅くない。
だが、彼女達の本当の狙いを、私は先読みすることが出来ていなかった。
私がこうして避けさせている間に、ヌメルゴンは、ハイドロポンプのみずとれいとうビームを上手く組み合わせて出来上がった氷によって、グライオンの飛行範囲を徐々に狭めていた。
当てられない、のではなく、当てていなかった、ということだ。
そしてたてこもるを使ったのは、前回と同じ戦法と思い込ませるための布石。
付帯効果の煙幕は、場を作っていると悟らせないための目隠し。
気付いた時には、もう相手の策に嵌められた後だった。



「てっていこうせん」



にやりと口角を上げて笑ったナマエさまは、静かにそう言った。
それは、はがねタイプ最強の大技。
ヌメルゴンの中心部に集まった眩い光が束になって放たれたが、最早なす術はなかった。




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