てっていこうせんをまともに喰らったグライオンに、残された体力はなかった。
ひらひらと落下してくるグライオンを、両手で受け止める。
地面に手をつくヌメルゴンを見る限り、向こうも体力はかなり消耗したようだ。
「スーパーブラボーでございます」
グライオンを手元のボールに戻し、手を叩いて彼女を賞賛した。
活躍したヌメルゴンを労うようにそっと撫でるナマエさまは、もうポケモンを怖がる素振りもない。
「あの…約束、覚えてますか…?」
ポケモンをボールに戻すと、ナマエさまはこちらを見ずに俯いたままそう尋ねた。
"ノボリさんの相手に相応しいと思えたら、また戻ってきます"
あの事を言っているのだろう。
「ええ、これだけお強くなられたのですから私には勿体ないくらいの…」
「そうじゃなくて…!」
いやそうなんですけど、と彼女は何かを言いにくそうにしていたが、ぽつりぽつりと話を始めた。
「私、ノボリさんのことが好きです」
自分もそうではないかと薄々感じていたことが、彼女の口から出てきた。
そのことに驚いたからなのか、単純な嬉しさからなのか、私の心臓がこれでもかというほど煩く早鐘を打ち始める。
なにか気の利いた良い返事をしようと口を開きかけたが、情けないことに言葉はうまく発せない。
「ポケモン勝負が上手な貴方には、ポケモン勝負が上手な方が似合います」
「…?」
「でもそれは私とは程遠くて…ノボリさんと一緒にいられることは嬉しいはずなのに、同時にそれが嫌だったんです」
彼女の言っていることがどういうことか、私にはすぐにはわからなかった。
「それなら、もっと強くなって貴方の隣に立つに相応しくなろうと思って」
貴方に勝てなきゃ貴方に相応しい女性にはなれませんから、と俯きながらナマエさまは困ったような笑い方をした。
「今日やっと、肩を並べられると思えたんです、だから」
先程の勝負の中で負けられないと言った時の、彼女の表情が蘇る。
あの時の強い意志は、きっとその言葉を告げるための決意の現れだったのかもしれない。
「ノボリさんの、側にいさせてくだい」
ああ、やっと、わかった。
あの時彼女の言った相応しいは、勝負における相手としての相応しい、ではなかったのだ。
女性として、思い人としての相応しい、だ。
彼女は強くなければ私には相応しくない、と言った。
けれど、そんなものがなくても、私は。
「わたくしも…ナマエさまのことを、お慕い申しております」
彼女の堅く握り締められた左手を取り、私の掌で包み込んだ。
ようやく視線が合ったナマエさまの頬は紅く染まり、丸く開いた瞳は潤んでいるように見えた。
「これからもわたくしと共に、来ていただけますか?」
その言葉に、小さく頷いたナマエさまの肩をそっと抱き寄せる。
彼女の瞳からぽろぽろと零れ落ちる涙が、天冠の山麓の地面を濡らす。
初めて出会ったあの日も、ここで貴女様は涙を零していた。
しかし、今日はあの日とは違った。
その涙が心苦しいなんて、ちっとも思わなかったのは、それが喜びに満ち溢れていたものだったからーー
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