モジャンボから次々と発射されるヘドロばくだんを物ともせずに、大空を自在に駆け巡るドンカラス。
桁外れに高い水圧で発射されるエンペルトのハイドロポンプを、真正面から受けて耐え抜くダイノーズ。
目にも止まらぬ速さでインファイトの打ち合い、どちらかが片膝を着くまで殴り続けるゴウカザルとカイリキー。
タイプで圧倒的に不利であろうとも立ち向かうジバコイルに、容赦ない攻撃力のじしんで叩きのめすガブリアス。



「なんだよ、これ…」



目の前で繰り広げられているこの出来事が、さっきやっていたおれのそれと、同じには到底見えなかった。
タイプが有利だろうと不利だろうと、どちらのポケモンが先に倒れるかなんて、全く予想ができない。
ここまでくると、ポケモンのタイプの相性なんてものは、最早通用しないのかもしれない。
この2人のポケモン勝負は、最早おれの知っているポケモン勝負ではなかった。
そしてなによりも、おれはこの2人の勝負に恐怖をも感じていた。
2人とも、普段とは別人のような表情だったからだ。
ノボリさんの瞳は、視線が合えば息の根を止められてしまいそうなくらい鋭い眼光。
ナマエさんの笑顔は、口角が異常なまでに吊り上がり狂気に満ちたような笑み。
こんなの、ポケモン勝負で見る表情じゃない。



「やっぱり強いね、ノボリは」


「何を仰いますか、ナマエも相変わらず」



どっちも別次元だよ、と言いたくなるのはこの際我慢した。
そんな事を言ったところで、あんな状態のこの2人には何も届かないだろうから。
そして、2人が出した最後のポケモン達。
ナマエさんはヌメルゴン。
ノボリさんはグライオンだ。
相性としてはノボリさん優勢といったところだが、果たして結果がそれに左右されるかは正直なところわからない。



「今日は勝ちたいなあ、お客さんもいることだし」


「わたくしとて、負ける気はございません」



ナマエさんの合図にたてこもるヌメルゴン。
そうはさせまいと、電光石火も凌ぐ素早さでだいちのちからを繰り出すグライオン。
舞い上がる砂埃と広がる煙幕に、2匹のポケモンの姿は見えなくなる。
どうなったんだ、と息を呑んで見守っていると、途端にグライオンと思われる影がつばめがえしでその全てを薙ぎ払った。
そこからのヌメルゴンとグライオンの攻防戦は、もうおれの眼球では追い切れなかった。



(やっぱりこんな勝負の審判なんて、引き受けるんじゃなかった…)



そう思っても、もう後の祭りだったことはとうの前からわかっていたことだった。




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