デンジさんとジムに毎日出かけてはいるものの、私はといえば掃除したり、近所のお店に出かけたり。
今まで特にこれと言って、何かをしているわけではなかった。
でも家で1人留守番をするのも性に合わないし、スマホをもらってからも結局デンジさんと行動を共にさせてもらっていた。
すると見兼ねたデンジさんが、私に面白そうな提案をしてくれる。
「…ジムの改造?」
「ああ、ちょっと内装と仕掛けを変えようと思っててな」
暇ならどうだ?と彼は私を誘う。
クラフトといい、建築隊の仕事といい、ものを作ったりするのは、結構好きだ。
それに、もしかしたら私の今までの仕事が何か役に立つこともあるかもしれない。
逆に、何か得られるものがあるかもしれない。
せっかく未来のヒスイに来たことだし、私はデンジさんの申し出を受けた。
まあ、単純に面白そうだと思ったことの方が大きいけれど。
ジム改造のための作業を一通り説明してもらい、私に出来そうな仕事をもらった。
図面は建築関係なら多分読めるし、配線はギンガ団本部の照明のくらいなら少しやったことがある。
わからなかったら聞いてくれればいいと言ってくれたし、工期も特にないようだから建築隊の仕事に比べたら随分と気が楽だ。
「上手いな、本当にやったことないのか?」
「少し触ったことがあるだけで、こういう本格的なものは初めてです」
隣で作業をするデンジさんの見様見真似で私も作業を進める。
もしもムラで本格的に電気が普及し始めたら、この知識は必要になってきそうだ。
もっと手伝いをして勉強するのもいいかもしれない。
それにこういう作業は、思っていたよりも随分と楽しい。
私が施工した部分をじっと眺めて確認したデンジさんは、満足げに頷く。
「思ってた通りだ、センスあるなナマエ」
「あ、りがとうございます…」
デンジさんにふと笑いかけられて、どうしたら良いかわからず目を逸らす。
空調が効いているはずなのに、私の顔だけはやたら熱くて恥ずかしくなった。
そういえば、こういう作業をしていると、ふとヒスイにいた頃の仕事を思い出す。
図面を描いて、材料調達して、施工して。
あれ、私って、ここに来る前は群青の海岸にベースキャンプを設営するために下見に来てたんだったな。
あれから群青の海岸のベースキャンプは、どうなったんだろう。
気にはなっていたけれど、今の私ではどうにもならない。
なにより、ここでの生活に満足しているからとりあえずいいか、なんて思っている自分もいる。
シンオウの暮らしに慣れ過ぎてしまった自分に、少しだけ笑ってしまった。
「ナマエが楽しそうで良かった」
「え…?」
「あ、いや…君もオレと同じ類いの人間なんだって思っただけだ」
ふいと顔を逸らしたデンジさんは、その金色の髪のせいで表情はよく見えなかった。
けれど多分この人は、こういう事が好きなんだろう。
デンジさんはジムでバトルがないと、図面を描いているか配線を弄ってるか、どっちかをしている。
私もヒスイでは、図面を描いているか施工してるか、どっちかだったな。
同じ類いと言われてみれば、確かにそうかもしれない。
そういう仲間が増えることは、時代が違えど私だって嬉しい。
「とても楽しいです、またやらせてください」
「もちろんだ」
その日は私もデンジさんもジムの改造に没頭し過ぎて、家に帰ったのはとうにナギサの街が真っ暗になっていた頃だった。
帰り道すらも改造と工事の話ばかりしていたのは、言うまでもない。
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