居間の壁にかかる時計が、とうに0時を過ぎた頃。
私は、未だにジム改造用の作業をしていた。
家でも出来るような、簡単で単調な作業ばかりをしていると、流石に瞼が重くなって図面を見る視界が霞む。
それに、隣で静かに座るデンジさんのレントラーの温かさが、時刻に加えてさらに眠気を誘う。
「ふぁ…」
デンジさんが湯浴みに行っていて、いないことを良いことに、いつもより大きく口を開けて欠伸をした。
それを見ていたレントラーも、釣られて大きな欠伸をする。
揃えた前脚に顔を埋めた彼の立派なたてがみを撫でてあげれば、満足そうに目を閉じた。
私も、少しだけ休憩しちゃおうかな。
ぐんと両手を高く上げて伸びをしていると、そんな私の考えを読み取ったかのように、レントラーが服の裾を引っ張る。
「…いいの?」
レントラーが私のすぐ側で背中を丸め、もたれかかりやすいように体勢を変えてくれる。
ぐるると喉を鳴らしたのは、良いよという意味だと思うことにした。
ふわふわとした毛並みに身体を沈めさせてもらうと、それはそれは気持ちがよく、私はあっという間に深い眠りに誘われた。
とても、よく寝ていた気がする。
レントラーの計らいとあのふわふわのお腹、なかなかに威力があったな。
ふと、目が覚めてそんなことをぼんやり考えていた。
それでもまだ眠たくて、半分も開かない眼で捉えたものは、さっきまで側にいたレントラーではなく。
(…デンジ、さん?)
とうに寝巻に着替えていて、静かに眠るデンジさんが見えた。
そうか、私が寝てしまった間に上がっていたのか。
それにしても、おかしいな。
なんでこの人が、私の隣で寝ているんだろう。
それもここは、私の布団ではなさそうだ。
いろいろ思うことはあったが、あれこれ考えるのはやめた。
そんなことよりも、目の前のデンジさんがとても綺麗で目が離せなかったから。
(まつげ、なが…髪きれい…)
思わずその金色の髪に、手を伸ばす。
頬にかかるそれを耳にそっと掛けて退かすと、窓から微かに漏れる月明かりに照らされてデンジさんの眠る顔がよく見える。
その時、私は今までの不可解な動悸の意味が、ようやくわかった気がした。
ああ、わたし、この人のこと。
(すき、なんだ)
自分が、遥か昔のシンオウからやってきたことを忘れられるくらい、私の心はこの人の事でいっぱいだった。
不思議だな、初めて出会った時は死んでも同然、何されたって仕方ない、なんて思っていたのに。
今なら、もう少しだけ貴方に近付いても、許されるだろうか。
空いた隙間を埋めるように寄り添い、デンジさんの胸元にほんの少しだけ頭を預ける。
触れたところから伝わる、デンジさんの鼓動に酷く安心した。
心地良いリズムと温かさに、私は再び瞳を閉じる。
自分が今、何をしているのかも忘れてそのまままた眠りについた。
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