外はまだ暗く太陽が昇る前なのに、目が覚めた。
枕元のスマホを見ようとすると、胸元に暖かい何かがいた。
レントラーだろうか、それともサンダースだろうか。
それにしては、何だが胸が高鳴るような、それでいて少し安心する匂いがする。
けれど、きっとポケモンの誰かだと思って、まだ半分も開いてない眼でそっとそれを撫でた。



「…っ!?」



触ったことのない毛並みで、驚いて視線を落とせばその暖かさの正体を知った。
オレの胸元にはナマエが寄り添い、すやすやと寝息を立てて眠っていた。
そんな状況に一気に目が覚めて、思わず声を上げそうになるが、口元を抑えてぐっと堪える。
次に、自分と彼女がちゃんと服を着ているか確認した。
昨日の夜は、風呂から上がったら、ナマエがオレのレントラーと一緒にリビングで寝ていたんだっけ。
彼女の部屋に勝手に入るのも気が引けて、決して広くはない自分のベッドにとりあえず運んだ。
それから、作業していたリビングのテーブルの周りを少しだけ片付けて、オレも眠くなってきたからそのままベッドで寝てしまったんだ。
段々と昨日のことを思い出して、深く溜め息を吐き出した。
ああ良かった、とりあえず変な間違いはなかったらしい。
でも、少しくらいなら、君に触れても良いだろうか。
いろいろ思うことはあったが、あれこれ考えるのはやめた。
そんなことよりも、目の前のナマエが愛おしくて仕方がなかったから。
起こさないように、そっと頭と腰に手を回して彼女を抱き締める。
彼女の不思議な甘い香りと柔らかさに、普段とは違う胸の高鳴りの意味が何なのか、改めてわかった気がした。
ああ、オレは、君のことが。



(すき、だ)



いつからか、ナマエとジムの改造をして、たまに一緒に怒られて過ごす毎日が幸せだと感じるようになった。
こんなにも、自分と気が合う異性がいるなんて思わなかったし、都合良く出会うとも思ってなかった。
だから柄にもなく、君しかいないと思った。
もう君みたいな人には、一生出会えないと思った。
けれど、君は遥か昔のシンオウからやってきた、生きる時代の違う人間。



「なんでオレ達は、同じ時代に生きてないんだろうな…」



口にすると、こんなに近くにいるのに、彼女がとても遠い存在に感じる。
絶対に離したくないのに、どんなに手を伸ばしても届かないような気がしてならない。
だから今だけは、君を独り占めさせてほしい。
腰に回した腕でぐっと彼女を引き寄せて、髪をそっと撫でる。
まだ何も気付かずに眠るナマエの頭に頬を寄せて、オレは再び目を閉じることにした。




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