不思議な夢を見た。
ナギサの海に、黄緑色の光が浮かぶ夢。
その話をナマエにしたら、私も見た、と言っていた。
その言葉で確信をする。
ああ、今日なんだろうと。
久しぶりに初めて会った日に着ていた服の彼女を見たら、オーバが買ってきたパーカーの方に見慣れてしまったせいか、なんだか変な感じがした。
彼女の準備が整ったら、ナマエと出会った浜辺に向かう。
夢で見た通りだった。
黄緑色の光がナギサの海上にぽっかりと浮いていて、写真でしか見たことがない伝説のポケモンがそこに待っていた。
「あなたが…ときわたりのポケモンなの?」
ナマエが問いかけるようにセレビィに話しかけると、いかにもとでも言うように、そのポケモンはくるりと一回転して鳴く。
その無邪気さが、今のオレにはやたら残酷に見えた。
「ナマエ、これを」
「シンオウのモンスターボール?」
「餞別だ、向こうに着いたら外に出してやってくれ」
セレビィに手を伸ばそうとするナマエを引き止めるように声をかけて、彼女の手にモンスターボールを置く。
彼女のオオニューラと一緒に腰に付けられるよう、ボールを改造してよく似た様な藍色の紐を通しておいた。
ナマエに内緒でキッサキシティまで行って、捕まえたニューラ。
慣れないあくタイプのポケモンを、ジムの合間にこっそり育てて進化させたマニューラの入ったボールだ。
大切にします、と嬉しそうに笑うナマエは、きっと気に入ってくれるだろう。
「セレビィ、ナマエのことをヒスイまで頼む」
「デンジさん…」
「…もう、行くんだろ?」
彼女の手を取ると、宙に浮かぶセレビィに手渡すように掲げる。
セレビィは、それを了承してくれたのだろう。
オレ達の繋がれた手の周りを一周すると、ナマエの手の甲にそっと触れた。
すると、彼女だけが黄緑色の光に包まれて、ふわりと身体が浮かび上がる。
夢で見た通りなら、これが本当に、最後。
「デンジさん!貴方がずっと笑っていられる未来を、私が必ず創るから!」
彼女は、瞳から溢れるほどの涙を溜めて、そう叫ぶ。
「だから!それまで待っていてください!」
行かないでくれ。
言えない言葉の代わりに、少しずつ遠ざかる彼女の手に指を絡めて強く握りしめると、自分の方へと引き寄せた。
そのまま空いた片方の手を腰に回し、優しく抱きしめて口付けをする。
君との最後のキスは、しょっぱい涙の味がした。
「ああ、待ってる」
彼女の手を離すと、鐘の音とも違う不思議な音がナギサの街に鳴り響いた。
彼女とセレビィを包む黄緑色の光が辺りに広がり一層眩い光が放たれたと思えば、一瞬にして1人と1匹の姿は消える。
「好きだ…これからも、ずっと」
全てが消えてしまったナギサの海で、ぽつりと呟く。
けれど、誰にも伝わることないこの言葉も、太陽に照らされて輝く波の音に掻き消された。
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