デンジさんとジムから帰宅し、いつものように腰に付けていたオオニューラのボールを外すと、彼はそれをじっと見つめていた。
「それ、今のと少し違うよな」
「モンスターボールですか?」
私の手元にあるオオニューラのボールの側にデンジさんがレントラーのボールを並べると、デンジさんの言いたいことの意味がわかった。
なんというか、私のボールはゴツゴツしていてひと回りくらい大きいような気がする。
「このモンスターボール、初めて自分で作ったやつなんです」
ちょっと下手くそですね、と自分で笑ってオオニューラのボールを握ると、デンジさんから驚いたような声が聞こえた。
ああ、そうか、シンオウではお店で買うことが普通なんだっけ。
ヒスイでは、自分でこういった道具を作るのが割と当たり前だった。
幸いにも私はそういうことに向いていたようで、ムラでは結構上手に作れる方だ。
まあ、テッカンさんほどではないけれど。
「他にもキズぐすりや、ポケモンの能力を上げる薬なんかも自分で作ります」
「へぇ、面白そうだな」
「いろいろ作れるようになれると楽しいですよ」
向こうから持ってきていたポーチから、キズぐすりやげんきのかけらを取り出すと、デンジさんは興味深々でそれらを手に取って見ていた。
よく出来ているな、と一通り眺めると、彼は何か言いたそうにキズぐすりを見つめる。
「なぁ、これ、オレにも作れないか?」
「材料があまりありませんが…やってみますか?」
ポーチを探れば、モンスターボールとキズぐすり、めかくしだまくらいは作れそうな材料が入っていた。
クラフトキットを広げて、デンジさんに材料のぼんぐりのみとたまいしを渡すと不思議そうにそれらを眺める。
まぁ、こんなきのみといしからって思うのは普通だと思う。
ぼんぐりのみを殻だけの状態にして、たまいしを加工して、と順番にやって見せれば、デンジさんはまるでモンスターボールを作り慣れているかのようにすんなりと作業する。
あ、この人も、私と一緒だ。
手先が器用で、こうやって物を作るのが得意な人。
細く長い指から次々と作られていくパーツを、順番通りに綺麗に組み立てていく。
モンスターボールを作る工程なんて、もう飽きるほど見てるはずなのに、デンジさんが作る姿は何故だか見入ってしまった。
最後の仕上げに留め金をぱちりと嵌めれば、それは完成だ。
「すごい、初めて作ったとは思えません…」
「上手に出来てる?」
完成したボール越しに嬉しそうに笑った彼に、どっと心臓が脈を打って息が詰まる。
急に時間が止まったような気がして、瞼をぱちぱちと瞬かせた。
前にも似たようなことがあったけれど、今日のはそんなの比じゃないくらい。
次第にかっと顔が熱くなるのを感じて、しどろもどろになって返事をしたら、そうでもない?と心配させてしまった。
ううん、とても上手だ。
でも、貴方の嬉しそうに笑った顔の方が気になってしまって。
(なに、これ…?)
ナマエ?と呼ばれて顔を覗き込まれたけれど、何でもないとそっぽを向く。
今はこれ以上、デンジさんの顔を見れない。
他にもなにか作りますか、なんて話題を逸らすだけで私は精一杯だ。
幸いにもクラフトに興味を持ってくれたデンジさんは、次はめかくしだまを作りたいと言ってくれたから助かる。
結局その日は、寝るのも忘れるくらい夢中になってしまったデンジさんと、材料がなくなるまでクラフトをした。
どんな話をしながらどんな物を作ったのか、あんまりよく覚えていなかったが、彼がとても楽しそうに笑っていたことだけは、なぜだかはっきりと覚えていた。
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