Sucreve
囚われているのは


菊田さんは私を子供扱いする。
「ん?どうした。おねむなのか?」
無言で見つめる私をひょい、と抱えて布団へと連れて行く菊田さん。私を寝かせるとその横に添い寝するように横になった。
「ほら、ねんねしような」
「……私子供じゃないんですけど」
唇を尖らせると菊田さんはそこを人差し指でつつく。「こんな可愛い顔してるから甘やかしたくなるんだよ」と。
「何ですかそれ……」
「子供だと思ってるわけじゃないんだって。可愛がってるだけさ」
「…………」
そう笑う菊田さんの目は優しい。穏やかな微笑みとでも言うのだろうか。見る者全てを安心させるような、そんなものだ。
「……ねぇ、菊田さん」
「んー?何だ?御伽話でもしてやろうか?」
「……明日は外に出たいです」
「…………」
菊田さんの表情が変わった。先程までの穏やかさはどこへやら。氷のように冷たい眼差しが私を捉えて離さない。浮かべていた微笑も消え、何の感情も読み取れなかった。
「……言ったろ?お外は怖いんだよ」
「でも」
「誰かがお前を攫っちまうかもしれないんだ。お前がいなくなったら、俺は」
菊田さんの腕が私に絡みつく。抱き締めるなんて生易しいものじゃない、息も出来ないくらいにきつく、強く菊田さんは私を締め付ける。
「……っ」
「ああ、悪い。……だから、なぁ、出るのはダメだ」
菊田さんがやっと力を緩めた。落ち着いたのか少し笑みを浮かべている。
誰かが攫うだなんて、あるわけないと否定出来たらこの人は安心するだろうか?
そもそも、私を攫ったのはこの人だから、余計不安にさせるだけかと口を噤んだ。

終.

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