唯一の弱点
私の彼氏は完璧超人である。バトルは強いし頭はいいし顔もいいしでこいつの人生さぞかしヌルゲーだろうなと思った。彼が何で自分みたいなのと付き合ってるのかは定かでない。
もっといい人いるんじゃないのとかどこぞの誰それさんがあなたの事好きだってよとか言ったのに彼は「あなたさまがいいのです」と譲らなかった。
とりあえず付き合って、まぁ少しすれば飽きるんじゃないかなと思っていた関係はいつの間にか一年を迎えた。
そんな完璧超人な筈の彼は黒焦げの鍋を持って「……申し訳ございません」と言った。ある水曜日のことだった。
風邪をひいたので、今日は休ませてほしいと上司でもある彼に連絡したら彼はすっ飛んで来てくれた。ただの風邪なのにと思ったがその優しさが嬉しかった。
昼近くなり、「お粥を作って参ります」とキッチンに向かった彼。きっと料理も上手なんだろうと思っていたのに戻って来た彼の手には黒焦げの鍋。
「えっと……え?」
どうしたのそれ、と聞くと「焦がしてしまいました……」と大変にしょんぼりした声で言われた。
「……申し訳ございません。料理は不得手なんです」
「えっそうなの?」
「はい……」
他の事が何でも出来るからてっきり、と言うと彼は「料理だけは苦手でございます……」と消え入りそうな声で呟いた。その様子が何とも可愛かったのでつい笑ってしまう。
「……おかしい、ですよね。粥一つ作れず……」
「そんなことないよ。作ってくれようとしただけで充分嬉しい」
フォローを入れると彼はあからさまに安心したような顔をした。料理が出来ないくらい別にいいじゃない。他の事は出来るんだから。
黒焦げの鍋を持って肩を落とす彼は、至って普通の人だったんだなと思った。
end.
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