I love you.
Notice you.の方の続き。
ソシャゲで欲しかったキャラを手に入れた。やった、とか言おうとしてやめた。今日は彼が休みで同じ部屋にいる。この間みたくコーヒーをかけられたんじゃ笑えない。こんな短期間で2台目とか嫌だ。
なので平静を装ってそっとスマホを置いた。嬉しさを噛み締めたいのだ。
勿論SNSに呟くなんて真似もしていない。彼は多分2つくらいのアカウントで私をフォローしている。1つは彼とわかるもの、もう1つ、これ多分そうよね。みたいな鍵垢がいる。目的はよくわからない。好きにしてくれていいけど、と放ったらかしているので特に聞いたこともない。
彼はラップトップをいじりながらコーヒーを飲んでいる。何かお菓子でも持って来てあげようかなと立ち上がった。ついでにトイレ行ってこよ。
私が急に動いたからだろう、ノボリさんがこっちを見たので「トイレ行くだけよ」と返した。今日日三歳児でももう少し目を離せると思う。
お菓子片手に戻ると、ノボリさんが立っていた。マグカップを手に、って待って。
まさかと思って見れば真下には私のスマホ。またか!と慌てたけどどうやらまだ何もしていないらしい。というか、何でわかったの?
「…………」
じとりとした目がこちらを見た。
「……何故、何も仰らないのですか」
「え?」
「あなたさまが欲しかったキャラクターなのでしょう」
「そ、うだけど……」
「……隠されているようで、大変不安になります」
「ていうかごめん、話の腰折るけど何でわかったの」
口にしてないしSNSにも上げてない。どこでどうバレたの。
ノボリさんは無言で視線をうろうろさせた。その視線は不意にラップトップに移動する。
「……スマホって画面共有出来るの?もしかして」
「はい」
「成程……」
道理で仕事でも無いのにラップトップ膝に乗せてるわけだよこの人。ていうかそんなこと出来るの?それは一般人が持ってていいスキル?ハッカーとかじゃない?
「……でも喜んだら喜んだでまたコーヒーかけるんでしょ?」
「…………」
暫くの無言の後、否定出来ませんと言われた。ほらー、と言うと彼は何とも申し訳なさそうな顔をする。
「それでも、やはり隠されるのは嫌なんです」
「そう……そうか……」
解決策が思いつかなさすぎると頭を抱える。言っても言わなくても面倒臭い。
「……じゃあ……隣で見てる?感情は出さないようにするけど『やった』くらいは言わせて?」
「……」
「それでもダメ?」
「……わかりません」
「やってみよっか、と言いたいけど今石無いのよね」
「…………こちらを」
ノボリさんが差し出したのは課金する人なら誰でも知っているであろうコンビニで買えるあのカードだった。何で?
「え?…………え?」
何で持ってるのっていうかどこから出て来たのそれ何用?どれから聞こうかと思ったら「あなたさまが必要でしたらと思い用意しておきました」と言われた。
「……の割にコーヒーはかけるのね」
「…………すみません」
協力的なんだかそうでもないんだかさっぱりわからない。ここまで矛盾してよく生きてるなこの人。混乱しないのかしら。
「本当にいいの?」
「はい」
「じゃあありがたくいただきます。……あ、そうだ。ノボリさんが引いてみる?」
「よろしいので?」
「うん」
カード裏の英数字を打ち込んでさくっと課金する。そうしてガチャの画面をノボリさんに見せた。
「ここ押して」
「はい」
どのタイミングで抽選されるかわからないのでガチャを選ぶ画面から押してもらった。画面が切り替わり、下向きの矢印が出て来る。
「そしたら今度下にしゅっと」
「はい」
私の言う通りにやってくれるノボリさん。演出はスキップでいいかな、と飛ばしたら一枚えらく光っているカードがって待ってこれ待って。
「……やっ、たー!超レア!!」
欲しいといえば欲しかったけど絶対無理だよなぁと諦めていたキャラだった。さっき欲しかったキャラとは属性が違って、どっちかでも手に入れば御の字なんて思っていたのに。
「すごいすごいありがとうノボリさん!!ノボリさんのおかげだよ!!」
わー、とノボリさんの方を見るとほんのりと頬が赤くなっていて、猫みたいに瞳孔が真ん丸になっていた。
ノボリさんの考えていることが何となくわかった。そうか、これが正解だ。
「……ねえ、今度からノボリさんが引いてよ」
「はい」
「それならいいよね」
「……はい」
嬉しそうに目を細めるノボリさん。どうやら今後私のスマホがコーヒーまみれになることは無さそうで安心した。
end.
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