Sucreve

half awake








ど忘れというのは誰にでも生じるものだと思う。老若男女問わず。それが寝起きなら尚更だ。
隣で眠る恋人の名前が全く思い出せず、昨夜読んだ漫画のキャラの名前をうっかり口にした。
「…………今何と?」
眠っていたはずのノボリの目がぱちりと開いた。あ、ノボリだ。ノボリさん。サブウェイマスターのノボリ。ちなみに弟はクダリ。
「今他の男の名を呼びませんでしたか?」
「えっ、あ、おはよう!」
不穏な気配を感じたので話を変えようと挨拶したら「おはようございます。それで先程のものはどなたさまのお名前でしょう」と1mmも笑ってない目で言われた。
「まさか、わたくし以外の男に懸想を?」
「違う違う違う違う」
何でか腕を掴まれぎりぎりと握られたので全力で否定した。違います本当違います。
「き、昨日読んだ漫画のキャラ!何か、何となく口にしちゃっただけ!」
「何故ですか。何故わざわざそのようなことを。何故わたくしは朝一番に他の男の名を呼ぶ恋人の声で目覚めねばならないのでしょうか」
「……それは、本当、ごめんなさい……」
最悪の目覚めだったねとノボリの頭を撫でる。するとノボリは「それくらいではわたくしの機嫌は直りませんよ」と私に寄ってくる。
「抱き締めてもダメ?」
「足りません」
「えー……。じゃあ今日は一日一緒にいるから、ね?」
「……致し方ありませんね。手を打ちましょう」
「ありがとノボリ。……好きだよ」
「わたくしもでございます」
どうにか機嫌を直してくれたらしいノボリの笑みに安心しつつ、彼の頭を撫でるのだった。


end.


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