Sucreve

予定外



予想外のノボリさん視点






恋をしてしまいました。相手は大変に可愛らしいお嬢様でございました。
わたくしが恋に落ちたのはいつだったか。初めてのバトルで告白された時は面食らいましたし一過性のものだろうと思っておりました。
ですが彼女は何度も何度もバトルトレインにご乗車くださり、わたくしの元へとやって来てくださいました。そうしている内にそのひたむきな様子にわたくしも惹かれるようになったのです。
彼女はわたくしの事を本当に愛してくださっているようで、写真を撮りたいだとかわたくしの物が欲しいだとか仰るようになりました。
本来であればお断りするべきではありましたが、どうせ誰も見ておりませんし、わたくしも彼女と写りたかったので一緒に撮りました。写真の中のわたくし達はどこかぎこちのない笑みを浮かべておりました。

  ◆

それからというもの彼女は勝負に勝ったらあれをくれだのこれが欲しいだのと仰いました。わたくしはその全てを受け入れました。
制服であり誇りでもあるコートは流石に一瞬迷いましたがわたくしの纏っていました衣服を彼女が身につけるのだと思うと得も言われぬ幸せを感じました。
なので差し上げようとしたのですが彼女は大慌てで「やっぱりいいです!」と首を振りました。冗談だった、流石に貰えない、と言うので代わりにハンカチを差し上げると大変に幸せそうでありました。
これからもきっと彼女はわたくしに会いに来てくださるのでしょ
うが、それだけではわたくしは満足出来そうにありませんでした。これから先の人生全て彼女と過ごしたいと願い始めました。
彼女の想いは知っておりますがわたくしの気持ちをお伝えしておりません。指輪や彼女と暮らす為の部屋も用意して、次にお会い出来たら私も同じ気持ちですとお伝えしようと思っておりました。
ですが、彼女が急にバトルサブウェイにいらっしゃらなくなったのです。
何かわたくしに至らない点がありましたでしょうか。最後にお会いしたあの日、彼女はわたくしに白星を掲げわたくしの手袋を手に軽い足取りで帰って行ったはずです。
ですからわたくしに落ち度は無い筈なのですが何故彼女はわたくしに会いに来てくださらないのでしょうか。
悩んでも考えてもわからず、日々悶々としておりました。今日は来てくださるのではないか、明日は来てくださるのではないか、とずっと思っておりました。
ところが一月経っても彼女がバトルサブウェイに訪れることはありませんでした。
もしや彼女の身に何かあったのではないかとすら思い、日々事故や事件の類のニュースを調べました。ですが彼女の名前がそこに載ることはありません。
一体どうしてしまったのだろうかと鬱々と過ごしていたある日のことでした。昼食をとりにバトルサブウェイを出ていますと、愛しい彼女の後ろ姿を見つけたのです。
気が狂いそうなまでに恋い焦がれた存在。声をかけようと近付くと、彼女は小さく「会いたいなぁ……」と呟いたのです。
そのままバトルサブウェイへと向かわれるのでしたらきっと、いえ絶対わたくしに会いたいと思ってくださったに違いありません。ですが彼女はくるりと踵を返してしまいました。
そして背後に立っておりました私を見てびくりと一歩後退りました。その反応からしてやはりわたくしを嫌いになってしまわれたのでしょう。わたくしが一体何をいたしましたか。
そう、問いかけて至らぬ点を改善すべきであるというのはわかっておりました。ですが腹の中で渦巻く感情はそれをするよりも先に想いとなって口から溢れ出しました。
「何故最近会いに来てくださらないのですか他に好きな男ができたのですか先程会いたいと仰ったのは何処の誰ですかもうわたくしから興味は無くなってしまったのですかわたくしはずっと待っていましたのに、あなたさまがいらっしゃるのを待って、色々準備もして、なのに。……あなたさまはわたくしを愛していらっしゃるから安心しておりましたのに逃げられる心配は無いと思っておりましたのにこれではいけません、あなたさまがいついなくなるか、わたくしを置いて行くかわかったものではない。……やはり、愛しい方は閉じこめておくしかないのですね」
思いの丈をぶつけている合間に彼女は何か仰っていたような気がしますが聞き取れませんでした。いえ、聞く気がありませんでした。彼女に拒絶されてしまったら、わたくしは。
彼女に手を伸ばしますと彼女は困惑したように「え、何……を……」と更に一歩退きそうになりましたが力ずくで止めました。
「暫しお休みくださいまし。……あなたさまに手荒な真似をしますのは今回限りでございますので」
崩れ落ちる彼女を抱き抱えて申し上げますと彼女は何とも表現しがたい顔をしておりました。わたくしの腕に収まる彼女は大変愛おしくて、大変可愛らしい存在でございました。
もう二度と離しませんからと囁いて、わたくしは彼女の身体を強く抱き締めるのでした。



end.


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