事の起こり。
友達と長電話をしていた。他愛のない、オチも脈絡もないような話ばかりで、ふとスマホのとあるアプリの話になった。
「うん、そうそう。やっぱりパーティースタイルのキバナさんかっこいいよなーって。スーツよくないスーツ」
そう友達に言うと『わかるー!』と返ってきた。趣味が一緒である。
『でもあんたの恋人スーツ系じゃん』
「まぁそうだけど」
私の恋人、ノボリさんは黒のスラックスに白いワイシャツ、それと青いネクタイに黒と赤の縞のコートを纏っている。確かに一応スーツ系だ。
名誉の為に言っておくけど別にその一点が好きなわけじゃない。ちゃんと彼の人柄なんかも込みで好きだ。真面目なとことか優しいとことか。
チャイムが鳴って、遠くで扉を開ける音がした。なので「その恋人が帰って来たみたいだから切るね。うん、じゃあまた」と通話を終えた。画面にはノボリさんから『今から帰ります』とメッセージが入っている。ああ、無視しちゃった。
通話が終わるのを待っていたかのようにリビングの扉が開けられ、「ただいま帰りました」とノボリさんが入ってくる。
「おかえりなさい。ごめんね、メッセージ」
「いえ、構いません」
「待ってね。今ご飯温めるから」
ローテーブルにスマホを置いて、キッチンへ向かう。今夜はロールキャベツにしたけどちょっと季節外れだったかもしれない。今日は思ったよりも暖かい。
「ゆっくりで構いませんよ」
そう言いながら彼は上着を掛けて、鞄をソファーに置いた。そうしてコーヒーメーカーに向かう。
喉が乾いているのか、コーヒーが飲みたいのか。どちらにしろ彼の言う通りゆっくりめに準備してもよさそうだ。
コンロの火を点けて、ロールキャベツを温め直す。その間にサラダを冷蔵庫から出して、と思ったらノボリさんに名前を呼ばれた。ノボリさんはいつの間にかソファーの方にいた。
「どうしたの?」
「申し訳ございません手が滑りました」
微妙に棒読みに聞こえた。というか一体何の話?と行ってみると彼の手には傾いたコーヒーカップがあって、その真下には私のスマホがあった。
- 6 -
*前次#
ページ: