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「今から来週の授業参観のプリント流すから後ろに回せ〜」

轟くんと病院で偶然遭遇した日から一夜明け、月曜日の帰りのホームルーム。
担任の大きな声で、来週は授業参観があることが知らされた。

回ってきたプリントを確認すると、なんともまあド平日。いつもならママに伝えて終わりだが、そのママは入院中でパパも平日は仕事できっと無理だ。お姉ちゃんも子どもがいるから平日はきっと忙しい。うちは誰も来ないだろうな、と思っていたら担任から追加で連絡が伝えられる。

「当日の授業内容としては、保護者への感謝の手紙を朗読してもらうからな〜ちゃんと親御さんに言っとけよ。手紙も準備しとけ。」

終わった。
私は誰も聞いてくれる人がいないのに、感謝の手紙を読むのかと思ったら虚しくて仕方ない。何故このタイミングなのか。今だけは、保護者が来てくれる事が前提の授業内容を呪った。

もう来週が憂鬱すぎて、その事で頭がいっぱいで、ぼーっとしていたら日直の帰りの号令が教室に響く。みんなが下校していく中、信じられないくらい下がったモチベーションと共に、保健係の仕事を全うする為いつも通り保健室へと向かった。





保健室に着くや否や、リカバリーガールに「どうしたんだいその沈んだ顔は!」と心配されたので、事のあらましを話すと「まあそれはもう、仕方ないね。」ということにまとまってしまった。 確かにもう授業参観もその内容も決まっている事だし、仕方の無い事だろうけれど、そう言われて切り替えられるほど私はポジティブではない。


リカバリーガールが職員会議に向かい、保健室に一人になった頃、ふと思い出す。 そういえば、轟くんもお母さんが入院していると言っていた。お姉さんも仕事で忙しそうな雰囲気だったし、お父さんも平日ではきっと仕事があるのではないだろうか。
もしそうだったら、私と同じようにきっと彼も困っているはずだ。

「(週末、病院の帰りにでも聞いてみようかな……。)」 

   昨日、本当に偶然轟くんに会って色々とお互いのことを話せたけれど、この話をする為なんじゃないかと思うほどタイミングが良くて、轟くんとの約束があって良かったと心から思った。一昨日までのメンタルでは、きっとこの虚しさを抱えきれていない。
 


そんな事を考えていたら、何だか少し元気になってきた。
気持ちを切り替えるなら今しか無いと思い、保健係の仕事をするべく、椅子から立ち上がり箒を手に取る。


少しだけ、またこの時間に彼が来てくれたらな、なんて思いながら私は掃除を始めた。





2021/04 雄英白書よんだら授業参観も入れたくなっちゃった。