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『轟くん、今日は本当にありがとう!ちゃんとママに授業参観のこと伝えられたよ。轟くんがお母さんに話した時の気持ちを………』

重いだろうか。長すぎるだろうか。
そう思って打っている途中で再びメッセージを削除する。
彼に伝えたいことがありすぎて、何を送ればいいのか分からなかった。






轟くんと別れた後、私は走って病院へと引き返した。
面会時間ギリギリ。受付のお姉さんには何かあったのかと心配されたけれど、「言い忘れたことがあって」と肩で息をしながら伝えた。

病室に入るとわたしの姿を見たママは大きく目を見開いて、受付のお姉さん同様何かあったと思ったのか、ベッドから降りようとするものだから駆け寄って止める。

「本当は今日言いたいことがあったの」

言いたかったことが、溢れるように言葉になる。
プリントを鞄の奥に追いやった自分はどこかへ行ってしまったようで、でもそれは間違いなく轟くんのおかげだった。



そして分かっていたことだけれど、やっぱり授業参観にママは来られなくて、その代わりにお姉ちゃんが来てくれることになったとママから連絡が来た。
無理をしているのではと思いお姉ちゃんに連絡をしたけれど『その日はパパが休みだから大丈夫!ビデオ撮ってママとパパに見せてあげようね!』と返信が来て、高校生が授業参観でビデオか…と思って擽ったかったけれど、なんだか胸が温かかった。






その報告も兼ねて轟くんにLINEしようと思い、帰宅してから内容を考え初めて早1時間。
完全に煮詰めすぎてしまっていた。

『轟くん今日は本当にありがとう!ちゃんとママに言いたいこと伝えられました。やっぱりママは来れないみたいだけど、お姉ちゃんが来てくれることになったよ。ビデオ撮るって言ってたからちょっと恥ずかしいけど(笑)あと今日せっかく合わせてくれたのに、一緒に帰れなくてごめんね。』

とりあえず伝えたいことを簡潔に文字に起こす。
長すぎす短すぎず、これでいいのではないかと思った。正直もう正解が何か分からなくなっているので、半ば無理矢理 自分を納得させて、えい!とメッセージを送る。

するといつの日かと同じように、返事にドキドキする間も無く、すぐに既読がついた。

『良かったな。帰りの事は気にしなくていい。』
『あと、来週の見舞いは姉さんも来るから一緒に帰れなさそうだ。』

彼らしい簡潔な返事が届く。
そっか、来週は轟くんと一緒に帰れないのか。
そう思った時、自分の気持ちが酷くしょげてることに気付く。
でも初めから彼は"一人で来る時は"と言ってたのに、勝手に寂しがってしょげてる私はすごく我儘だ。

『そう言ってくれてありがとう。来週のことも了解!ゆうかのことは全然気にしないで大丈夫だからね⊂( *・ω・ )⊃ うちも来週はパパの帰り早いみたいだから!』

本心をくるみ込むように返信をする。
嘘はついていない、来週はいつもより早く帰ってくるとパパが言っていたはずだ。

そしてまたすぐに、既読がつく。
でも先程までとは違い、少し待っても彼からの返事は届かなかった。




既読の2文字を見つめる。
本当になんとなく、どうしてだか分からないけど、
また我儘な私が出てきて、このLINEが終わってしまうことが寂しくて。



『そういえば今週、期末試験に向けて出久くんと勉強会しようと思ってるんだけど、轟くんも一緒にどうかな?』



先程の1時間返信を煮詰めた自分はどこへ行ったのか。
思いついた時にはメッセージを送っていて、一瞬にして冷静になる。


出久くんから、轟くんは個性だけじゃなくて勉強もすごく出来ていつも英語を教えてもらってると聞いたことがあった。そもそも轟くんはヒーロー科で数人しかいない推薦入学者だということも思い出す。

「絶対に迷惑だ…!!!」

焦りすぎて、思わず口から出てしまった。
奇跡的にまだ既読はついていなかったので、送信取消をしようとしたその瞬間―――既読がつく。



自分で自分の行動を掴めなくてパニックになってた数秒を恨む。
絶対迷惑だ、既読無視されると思うと怖くなってLINEを閉じてしまった。

通知を見る勇気もなくてスマホを遠ざけようと掴んだその時、画面が光る。
それはやっぱりLINEの通知で、気付いた時には轟くんの名前と返信内容が目に入ってしまった。



『分かった。俺も分かんねえとこあるから助かる。いつやんのか決まったら教えてくれ。』



轟くんにとって、迷惑じゃなかった。
そう思い、胸を撫で下ろす。

急いでLINEを開き、分かった!また連絡するね!と返信をすると、やっぱりすぐ既読がついて、私はまたその2文字を見つめる。



その気持ちは先程までのとは全く別物で、ふわふわと頬が緩んでいく。
そして同時に、今週も轟くんとの時間を作れたことにホッとする自分に気付いた。

友達に懐くと自分から近寄ってしまうタイプなのは分かっているけれど、クラスも学科も違う彼との次を頑張って見つけようとする自分には、いつもより少しだけ、違和感を感じてしまう。


でもそれがどうしてかは考えてみてもよく分からなくて、
まあいいやなんて思いながら、明日の学校の準備をしようと鞄をひらく。

ファイルを整理すると、期末テストに向けて配布されたプリントがたくさん出てきた。
今回は中間と違って範囲も広いし、覚えることがたくさんある。
それでも、いつもなら憂鬱なテストも勉強も、きっと、いつも以上に頑張れる気がした。





2021/08/16