14
図書室のドアがガラリと音を立てる。
視線を向けるとそこに立っていたのは僕の幼なじみで、キョロキョロと室内を見渡していた。
僕らを探している彼女に分かりやすいように手を振ると、すぐこちらに気づいた祐佳ちゃんと視線がぶつかる。
その様子から僕の前に座っていた轟くんも気付いたようで、勉強中だった教材から顔を上げて彼女の方へと視線を向けていた。
「ごめん…!日直の仕事してて遅くなった…。」
「全然大丈夫だよ。日直お疲れ様。」
「緑谷と先に初めてたぞ。」
日直だから少し遅くなるかもと言っていた祐佳ちゃんが合流して、改めて勉強会が始まる。
荷物を整え鞄から教材を取り出した祐佳ちゃんは、僕の隣の席に座り「よし!英語やる!」と小さく気合を入れて、苦手な教科を頑張る様子だ。
でも、祐佳ちゃんとは小学校からずっと一緒に勉強会をしてきて、苦手な教科から始めて躓いて疲れて…という出来事が何回もあったから、僕は少し心配だった。
*
数十分後。一区切りつき教材から顔を上げると、凄い顔で教材と睨めっこをする祐佳ちゃんの顔がチラリと見える。
その顔は明らかに悩んで悩んで悩んで煮詰めてしまった様子で、声を掛けようとすると、それよりも早く僕の前に座っている彼の影が少し動く。
祐佳ちゃんの方へ少し向き直り、僕よりも早く手を差し伸べたのは轟くんだった。
「前田、こないだ分かんねえって言ってたのどこだ。」
「あ…!ここ!この文法が分かんなくて……」
「ああ、それは……」
そう轟くんに説明を受けながら、対角線上に座っていた為「ちょっと聞き辛いかも!」と言って祐佳ちゃんは彼の隣の席に移動する。
そうして2人で並んで勉強をする姿を見ていて、少し前までお互いの名前も知らなかった2人の距離が、僕にはぐっと近付いたように感じられた。
「おお…!轟くんのおかげで分かっちゃった!すごい!!!」
「別にすごくねえだろ、授業聞いてたら大体分かる。」
「だからそれがすごいんだよ…!?」
そう言いながら「祐佳なんてちゃんと聞いてるのに分かんないんだよ!?」と説明する祐佳ちゃんと、隣で話を聞く轟くんをみていて、最近よく祐佳ちゃんから話を聞く病院の帰り道もこんな風なのかなと、つい顔がほころぶ。
最初に祐佳ちゃんから「病院で轟くんに会った」と聞いた時はすごい偶然だなと思ったけれど、やっぱりそれから2人がよく話す様子を見るようになったり、今回の勉強会だって祐佳ちゃんが轟くんを誘ってたり、僕にとって大切な友人たちが仲良くなる事は、すごくすごく嬉しかった。
*
「あ、そういえば」
その後も僕らは勉強会を続け、それぞれの目標とするキリのいいところまで進めてお開きとなった。
そうして3人で帰路の途中、祐佳ちゃんが思い出したように話し出す。
「期末試験のヒーロー科の実技の日、祐佳保健係だから!なんかロボットと戦うんでしょ?怪我したら保健室来るんだよ。リカバリーガールのお手伝いしてるから!」
「うん!祐佳ちゃんがいてくれるなら心強いね。」
「ああ、そうだな。」
僕と轟くんがそう言うと、祐佳ちゃんはすごく嬉しそうに頷いてくれた。
そして「出久くん、あんまり無理しちゃ駄目だよ」と、今までの事もあるからか少し不安げな顔をしている彼女に「大丈夫!無理はしないよ!」と声を掛ける。
保健室で待ってくれている彼女のためにも、怪我のないように実技試験を合格して、良い報告が出来るように頑張ろう!と、より身が引き締まる思いだった。
2021/12