▼ ▲ ▼

 どうやらこの三人は本当にただのダイビング仲間だったそうだが、実は半年前まではもう一人仲間がいたが、事故で亡くなったそうだ。しかもその原因はお嬢様にあるらしい。
 お嬢様はかなりのわがままで、二人一組が鉄則のダイビングでまさかの単独行動をしでかしたあげく、助けに来た一人の仲間を見殺しにし自分だけ助かったという過去を持っていた。
「シャバにも中々なクズがいるらしいね」
「……片桐さん、子供たちが聞いていますよ」
「おっと失礼」
 まったく反省する素振りを見せずに陳謝する片桐に沖矢は思わず呆れた。
「ところで何か気になることはありますか?」
「何故私に訊くんだい?」
「コナン君があんなに絶賛するあなたの推理力にとても興味があるんですよ」
 そう言ってみれば、片桐は変わらない表情で「そんな大したことはないよ」と述べた。特に照れてなどいないらしい。可愛げのない女性である。
「ま、強いて言うなら三人とも顔を隠しているんだねえ、と思ったね」
「ああ…確かに」
 開田は青里に殴られたため右目に眼帯。大戸はお嬢様に風邪を引かされてマスク。青里は頬杖をついてニキビを潰してしまったため唇の右下に絆創膏。
「片桐さん!見てくださいよこれ!」
 ふと、光彦が腕時計を片桐に見せてきた。沖矢も覗かせてもらえば、腕時計にフィッシュと削られてあった。
 (成程…)沖矢はこれが何を意味するのかすぐに察した。ちらと横を見てみると、片桐も解けたのか笑みが深くなっている。推理力はやはり高いようだ。片桐はもう帰ろうとする被害者たちを引き留め、確信に満ちた態度で話しだした。
 話の流れは大方沖矢の推理したものと同じで、犯人は青里周平だった。動機は半年前に亡くなったもう一人の仲間が、お嬢様に見殺しにされたことだった。それでお嬢様を同じ目に遭わせてやろうとしたらしい。
 全てを吐露した青里はうなだれた。
「ふむ、事件は落着したみたいだね」
「ええ。では私はこのまま署のほうに…」
 しかしその時、青里が急に動き出した。
「きゃあ!」
「あ、歩美ちゃん!!」
「動くな!!」
 歩美の首筋には、鈍く光るナイフが添えられている。どうやら人質を取り高飛びする魂胆らしい。
 下手には出られないなと考え、沖矢は片桐を一瞥する。彼女は何気なく沖矢の背に隠れた。その行動に沖矢は彼女が何をする気なのか理解する。ならば、自分がやるべきことは一つしかない。
「0.12%」
 この数字は高飛びに成功し、逃げ続けられた確率だ。大抵の者はそのプレッシャーに耐え切れず自首するものが殆どである。つまりこの少なさは警察から逃げられなかったからではなく、自分から白旗を振った者が多すぎるが故の数字なのだ。
「果たしてあなたはこの孤独に耐えられるんでしょうか」
 少しずつ威圧をかけていけば、青里はぐっと喉を詰めた。刹那、沖矢の背後から片桐が飛び出た。動揺した瞬間を逃さず、片桐は光の速さで青里の手首を叩き顎を蹴り上げた。彼女は頭脳だけでなく格闘センスもあるらしい。
「すごいです片桐さん!」
「ありがとう!夕お姉さん!」
「怪我はないかい」
「うん!」
 そんなわけで、事件は漸く解決した。