名前には一人の兄がいる。その兄は才色兼備という言葉を擬人化したような人間で、おまけに妹の贔屓目なしで見ても性格さえ最高に良かった。
 そんな兄が嫌いで堪らなかった。幼少期、名前に近づいてきた同性の友達は大体が兄狙いだったし、異性の友達も年頃になると自然に離れていった。
 極めつけはこのセリフだ。
『お前ホントにあのお兄さんの妹なのかよ』
 余計なお世話だと言いたい。ポケモンスクールでの成績や性格の良さも劣っていた名前は、異性からすれば格好のからかいの的だっただろう。兄も兄でからかわれている名前を本気で慰めるのだから余計に惨めになった。
 そういうわけで歳を重ねるごとに斜に構えるようになった名前に、親しい友人などできなかったわけである。いつかの時見かねた父や兄が歳の近い子供を引き合わせた時もあったが、馬鹿にされていると思った名前は突っぱねた。自分の力で友達を作りたかったのだ。
 そんな卑屈な名前にギーマという友人ができたのは、まさに奇跡だった。
「何がダメだったんだろう」
 知らない内に気に障るようなことをしてしまっていただろうか。やっぱり自分では彼に相応しくないのだろうか。
「あああ〜ダメだ〜…」
 考えれば考えるほど思考がマイナスに向く。思わずしゃがみ込んで頭を抱えた。幸い通行人はごく少数だったので、あまり騒ぎ立てられることもなかった。
「どうした」
 しかしここに一人、お人好しなのか名前に声をかけてきた人物がいた。低い声からして男なのだろう。
「気分でも悪いのか?」
「いやぁ、ハハハ…気分悪いのか良いのかも分からないというか…」
「それは逆に大変じゃないか!」
「いやいやだいじょーぶ…だいじょーぶ…へへへへへ」
「取り敢えずどこかカフェにでも寄って飲み物でも…」
「いやマジでだいじょー……」
 起こそうと肩に触れてきたので流石にマズいと感じ、振り返る。褐色の肌と橙色の服に、もしやと硬直した。
「ん?どうした?」
 ギーマと同じ四天王の一人であるレンブが、眉をハの字にしてこちらを見つめていた。
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