ありのままの己を見せろ
「そろそろ行こう」
空っぽになったいちごみるくのパックを持ち、河南はさっさと出口に足を向けた。
「ありがとうございました。いかがでしたか?」
「そうだな、六割といったところだ」
中々厳しい。安室の口元もひくりと動いた。
まあ、彼女は洋食よりも和食を好む傾向にあるためこの結果は概ね予想がついた。――とはいえそれを鑑みたとしても河南はわざと安室を挑発しているようにも窺える。何故か。
「あなたもまた是非いらしてください」
会計の際、安室にそう告げられる。
「ああ…ありがとうございます。美味しかったですよ」
「…、ありがとうございました」
探る目は止まっていなかった。早々に彼に背を向け、店をあとにする。
「一々気にし過ぎなんだ、お前は」
帰り際、河南にそんなことを言われた。
「いや…気にするだろ、そりゃ」
「面倒な生き方をしているんだな」
溜息混じりに告げられ、どきっとする。河南の発言は的を射ていたからだ。
「…君には分からないだろ」
だからつい、冷たくしてしまった。「ああ分からん」河南はひるむことなく続ける。
「どちらつかずな考えは分からん。半端は死を意味する。意地を持っていなければ食われる…そういうところで生きてきたからな」
「……」
「お前はただ仮初の平穏に守られていたいだけだ。……言うか言わぬか、それだけを決めれば良い。どちらを選択しても誰もお前を責めない。責める権利など持たない」
――お前の人生だ、お前の好きにしろ。
河南はそう締めくくると、諸伏に背を向けて歩き出した。