理解できねぇもんは理解できねぇんだよ二度も言わせんな

 江戸川コナンは先日出会った女について考えていた。「…どう思う?」一人では結論を出せなかったので、今日はある人物の意見を求めに工藤邸にやってきていた。
「どう、と申されましても」
「あの人絶対何かあるよ!…別に、組織に関係してるとかそういうのじゃないと思うけど…」
 コナンのその自信なさげな声にふむと相槌を打つのは、沖矢昴という大学院生だ。本名は赤井秀一といってFBI捜査官である。訳あって素性を隠し、工藤邸に潜伏しているのだ。
「それに、その女の人と一緒にいた“ヒカル”っていう男の人も気になるし…」
「……まあ、無害なのでしょう?そんなに目くじらを立てる必要はないと思いますよ」
 その時、コナンは違和感を覚えた。「……もしかして」殆ど勘だが、確信していた。
「沖矢さん、河南さんのこと知ってるの?」
「“僕”は知りませんよ?」
 ならば赤井秀一の知り合いなのか。意外なところで繋がりを発見し、驚きに目を丸くする。ということは、“ヒカル”も赤井の関係者なのだろうか。
「ああそうだコナンくん」
「ん?」
「実は夕飯の買い出しに行かなければならないのですが、良ければお付き合いいただけませんか?ご馳走しますので」
 突然の話題転換に虚を衝かれたものの、まあ良いかと頷いた。
 ところ変わって駅前のスーパー。傍から見れば親子に見えるのだろうかとぼんやり考えながら、コナンは食材を淡々と選ぶ沖矢を眺めた。「何かお菓子でも買ってあげようか」「えっいや…大丈夫だよ!」そんな気遣いは無用だ。
「それより今日のご飯どうするの?」
「カレーにするつもりです」
 そういえば煮物系は得意だと聞いたことがあった。
「昴さん何カレーが好き?」
「そうですねぇ。チキンカレーも良いですが、」
「ちょっ…カレーにリンゴ丸ごとは入れないから!!」
「じゃあブドウにするか」
「何でそこでブドウが妥協案みたいになるんだよ!?」
 聞いたことのある声に、コナンはそちらに目を向ける。沖矢もつられて視線を辿った。