理解できねぇもんは理解できねぇんだよ二度も言わせんな

「あっ…あの人たち…!」
「おや知り合いですか、コナンくん」
「さっき言ってた人だよ!!」
 グラウンドで見た男女。間違いない、河南と“ヒカル”だ。カレーの中に入れる具材で言い争いをしている姿は目立っていた。
「こんにちはーっ!」
 コナンは沖矢の手を引いて二人に話しかけた。「げッ…君は…」ヒカルのほうはあからさまに顔を引き攣らせたが、河南は無反応だ。またコナンのことを覚えていないのだろうか。どうなっているんだこの女の記憶力は。
「河南さん久しぶり!また会ったね!」
「……」
 コナンの挨拶に返事をせず、彼女はただ沖矢を睨みつけていた。その視線には不快感があった。
「どうしたんだよ河南――」
 ヒカルの言葉尻を掻き消したのは風を切る音だった。それは、河南が沖矢に回し蹴りをした音だったのだ。幸い攻撃を察知した沖矢が素早く避けたので怪我はなかったが、突然のことに河南を除く全員が戸惑いの表情を見せた。
「いや何やってんだよ河南ッ!!」
「こいつを見てたら無性に苛立ってきた」
「だからっていきなり回し蹴りかよ!」
「グーパンのほうが良かったか?」
「暴力反対ッ!!」
 慌ててヒカルが彼女を止めようとしたが、力の差があってか彼女を完全に止めるには至らなかった。むしろ彼にまで被害が及んでいる始末だ。
「す、昴さん本当にあの人と知り合いじゃないの?」
「…知り合いではありません。彼女は僕を誰かと勘違いしているんでしょう」
「そ……そうなのかな…」
 あくまで白を切る沖矢に呆れつつ、コナンは河南を見やる。彼女は標的を沖矢からヒカルに変更して、何故かヒカルに手をあげていた。まったく意味不明だ。何をやっているんだと呆れたその時――場を凍らせる声が。

「おや…面白い顔ぶれですね」

 安室透だった。
「あ、安室さん…!」
「やあコナンくん…と、沖矢さん、でしたね?」
「ええ」
 安室はコナン、沖矢と視線を滑らせると鋭い眼光で河南、続いてヒカルを一瞥した。
「変わった面子ですよね」
「ぐ、偶然会ったんだ!安室さんも何か買いに来たんでしょ?ポアロのお使い?」
「そうなんだよ。頼まれちゃってね……でもラッキーだったよ」