答えって割と近くにある

「おやお久しぶりですね」
「ああ、貴様か」
 コナン含む少年探偵団が宝石強盗犯たちを捕まえたことを受けた安室は、数日後、河南と再会した。
「昼間からこんなところを彷徨いて……ニートの風上にも置けないな」
「それ貶してるんですか?貶してるんですよね?」
 そもそも自分はニートではないし、むしろ公務員なのだが。
 思わず反論しそうになったが、ここはぐっと堪える。彼女の言葉に一々反応していてはきりがない。安室は冷静な男であった。
「時に大串」
「安室です」
「貴様、妙にエンカウント率が高くないか?」
 不意の横文字に面食らったが、すぐさま口角を上げて返答を口にした。
「気の所為ですよ。なんですか河南さん、もしかして僕に気でもあるんですか?」
「オ゛エ゛エ゛エ゛エ゛!!」
「そこまで否定しなくても」
 本当に失礼な人である。
「……そういえば河南さん」
 こんな道端で再会したのは偶然ではない。安室はあることを訊ねたくて彼女の行方を追っていたのだ。
 やっとの思いで話の主導権を取得し、本題へ入る。

「今日は“ヒカル”さんと一緒ではないんですね?」

 すると、ほんの僅か、河南の眉がぴくりと動いた。安室はその刹那の変化を見逃さなかった。「貴様……」やがて河南が口を開く。
「好きなのか、奴が」
「なに言ってるんですか!?」
 予想の斜め上を行った言葉に、つい本気でツッコミをかましてしまった。だが完全に動揺している安室など見えていないのか河南は言葉を続ける。
「妙に奴のことを気にしているし…なにより名前を一回で覚えている。あいつを慕っている以外考えられんだろう」
「気持ち悪いこと言わないでもらえます?!」
「案ずるな、私はたとえ貴様が荼吉尼族の雄と交際していたとしても偏見など持たん。祝福してやるぞ」
「ダキニって誰?!いや、だからそういうのじゃないんですって!話を聞いてくださいよ!」
 勝手に方向づけする河南の暴走をなんとか宥める。