友達の友達と話すのは気まずい

 この日、何の因果か江戸川コナンは沖矢昴、服部平次と一緒にいた。この時点で厄介事が起こる可能性が百に等しいものの、コナンにとって二人は信頼に値する人間であるため何一つとして心配していなかった。
「それにしても沖矢さん?めっちゃ推理力高いやん。流石くど…コナンくんの友達やな〜」
「あ、ははは…そうでしょ?昴兄ちゃんホントすごいんだよ!」
 ――マジでいい加減慣れろ。
 相変わらずの服部に青筋を立てながら無邪気を装う。
 沖矢昴基、赤井秀一はFBI捜査官でありその推理力はコナンでさえ目を見張るものがある。故にほんの少しのボロでも正体がバレてしまうかもしれない。その辺りのことを西の高校生探偵は理解しているのだろうか。もしバレたらお前の所為だからなと心中で悪態をつきながら「平次兄ちゃんもすごいでしょ、昴さん」と彼に話題を振る。
「確かに服部くんもすごいけど、一番すごいのはコナンくんかな。とても小学生とは思えないよ。ね、服部くん」
「せせせっせせせせせせやな」
 動揺しすぎである。これは本当に駄目かもしれない。
 半目で服部を睨めつけていた折、彼が消えた。
 本当に、消えた。
「服部ィ!?!?」
 正体を隠すという目的など既に忘れた。素のまま彼の名を叫び、周囲を見回す。「コナンくん、そこです」何事もないかのように沖矢が後方を指差した。
「ごっ………ほっ…」
「ゴッホ?貴様、ひまわりでも見たいのか」
 ――あっ。
 ――めんどくさいのが来た。
 ある意味最低最悪の展開かもしれない。何故かは知らないが河南が服部の上に乗っかっていた。現状説明できるのはこれだけだ。瞬きの刹那、服部が消え、その後方で倒れ上には河南。まったくもって理解不能だ。
「何してるの河南さん…」
 しかしこのまま無視するわけにもいかないので渋々話しかける。
「眼鏡小僧、貴様こそここで何をしている」
「ボクそんなあだ名なの!?」
「私は飛んでいったクーポン券を追いかけたところだ。見つかって良かった……ん?」
 そこで服部を踏みつけていることに漸く気づく河南。
「貴様……私の下で何をやっている。趣味か?」
「何が!?具体的に何がや!?」
「女の下に入って踏みつけられる趣味だ。案ずるな、昨今多様性が謳われている。きっと受け入れられる」
「そのまま話進めんとって!姉ちゃんが勝手に俺の上に乗っかってきただけやから!」
「時に何故胡散臭い眼鏡と一緒にいる?眼鏡コンビとしてキャラを確立させたいのか?」
「変な邪推はやめてよね河南さん」
「そうですよ。なんなら僕、今からコンタクトにしても構いませんよ」
「その糸目に対応できるコンタクトなど存在しない」
「てかそろそろ退いてくれへん!?聞いてる?!」
 しまった。全員が服部を下敷きの体で話を進めていた。すまんと目で謝ればジロリと睨めつけられる。「ところで誰やアンタ。く…コナンくんの知り合いか?」先程の仕打ちなどなかったかのように普通に話し出す服部。反対に訝しげな表情を見せる河南。
「誰だ貴様」
「アレッ何でやろ。俺一般的な会話してるつもりやのに何で答えてくれへんねやろ」
「私はエリザベスだ」
「なんなんこれ、つっこんだほうが良い?」
「河南さん今日はヒカルさんと一緒じゃないんだね」
「コナンくん俺が話してるのに普通に割り込んでくんのなんなん??」
「そういえば彼と一緒じゃないなんて珍しいですね」
「沖矢さんも乗っかるんヤメテー」