終わりよければすべて良し
「どちらかというと逆では?」
「大串、お前は黙っていろ」
「安室です」
「河南さんがヒカルさんを振り回してるんだよねーっ!大串さん!」
「コナンくん!?」
「そうそう。河南はいっつも自由人だならな。大串くんもあの子に振り回される大変さが分かるだろ?」
「貴方たちわざとやってますよね?」
「まあ落ち着け安室」
「だから僕は―――……?!合ってる…だと…!?」
漫才か?
意外すぎる光景を目の当たりにして絶句する佐藤。安室はいつも余裕の笑みを浮かべて女性をリードしている印象だったので、こうして軽口を叩いている様は実に新鮮であった。
「そんなに全員逮捕が駄目なら私が吐かせても構わない。腕には少し自信がある」
「得意げに怖いこと言わないでください」
「少しだなんて謙遜にも程があるよ河南さん」
「そうだぞ河南。そんな可愛い顔で言ったって駄目だからな」
「可愛い顔とか今必要ありませんよね?」
「ま、まぁ河南さんは綺麗な人だよね!」
「馬鹿者、小学生に気を遣わせるな」
――いやあんたが一番遣わせてるよ。
皆の心境は一致していた。
ここで高木が佐藤に「ちょっと変わってますけど楽しそうな方ですね」と耳打ちしてきた。変わっているという節は完全同意だが、楽しそうかと言われるとかなり微妙だ。おそらく今は外野側にいるからそう見えているだけに過ぎないのだろう。佐藤は冷静であると同時に常識人であった。
「よし、じゃあ初めにそこのお前だ。顔と腹、どっちが良い?」
「えぇっ!?」
「河南、ステイステイ」
このままでは名もなき市民が犠牲になりかねない。「ま、まあ落ち着いて」と佐藤は間に入る。
「事件解決の為にも聴取にご協力お願いします」
「カツ丼は出るか?」
「は!?」
「事情聴取といえばカツ丼だろ」
いやそもそもここ取調室じゃないんだけど、と思ったものの笑顔をキープする佐藤。「も…申し訳ありません、カツ丼はちょっと…」柔らかく否定したが途端に河南の機嫌が悪くなった。「じゃあこうしよう」そして彼女は容疑者の一人に近づく。
「貴様が犯人だ」
彼女が指差した人物は、少し肥満体質の男。
「河南さん、何でそう思ったの?」
「直感だ」
「すんごい堂々と言ってるけど全然褒められないよそれ」
「くっくそ!何で分かったんだ!」
「あれぇ!?」
まさかの犯人を言い当てた彼女に対し、男がナイフを取り出して駆け出した。向かう先は河南。突然の行動に全員が虚を突かれた。止めなければ――咄嗟の判断で一歩踏み出したその時。
河南が、消えた。
いや、消えたように見えただけだ。あまりの速さに脳が錯覚する。
彼女は男が駆け寄るよりも早く自分から男に詰め寄り、その体躯を投げる。綺麗に一回転したその体は大きな音を立てて地面に叩きつけられた。
「河南さん。流石だね」
「ふっ…当然だ」
――いや何も褒められないんだけど。
こうして事件は無事に解決した。