同僚はただの同僚であって友達ではない
「んぐっ」
「……と言いたいところだがどうせ大した考えなんかねえんだろ?」
察しが良くて大変助かる。
諸伏自身今はまだ身を潜め燻っている状態だ。ここから脱却したくてアイリッシュを誘ったわけでもあるので、充分な作戦がないのが現状である。
アイリッシュはそういう諸伏の状態も正確に見極めた上で、だがまあ、と河南に視線を投げかけた。
「
正直なところ、諸伏は河南を巻き込みたくなかった。彼女は打倒組織に一切何の関係もない。自身を助けてくれた恩人を危険に晒す真似などしたくなかった―――が、そんな悠長なことを言っていられないのもまた事実で。ならば警察官である同期の連中を頼るかと訊かれたら答えは否だ。正体がバレているとはいえわざわざ危険な場所に引きずり込むつもりは毛頭ない。ましてやアイリッシュが警視庁に潜入成功したという前例があるのだ。どこから諸伏生存、ひいては組織壊滅作戦が漏れるか分からない。
「任せろ。私が頭領の首を獲ってきてやる。誰にも邪魔はさせん」
「……コイツが言うと本当にやりそうで怖えな」
「私は嘘はつかん」
「程々にね、河南…」
組織壊滅にあたって、その前にまずやるべきことがある。
信頼できる仲間と連絡を取ることである。
それはつまり公安内部の裏切り者を特定するのみならず、諸伏生存を周囲に隠しつつ敵に気づかれないように、確実に白と言い切れる仲間と接触するということを意味する。
「スコッチ、お前この家は誰に提供してもらったんだ?」
「ああ……ここは組織どころかゼロにさえも話してなかった俺のセーフハウスなんだ」
するとアイリッシュは苦い顔をした。「仕方ないとはいえ少し不安だな」彼は誰かにセーフハウスを突き止められる可能性を示唆し、案じている。それは正しい。諸伏も当初このセーフハウスを使うかどうかかなり悩んだものだ。
こういう不安要素を取り除く為にも、警察組織とは連携を取っておきたい。
諸伏は食事を終えた食器を脇に寄せて真面目な顔を作る。
「まずは確実に白と言い切れる公安の人間にコンタクトを取ろう」
「当てはあるのか?」
「ある」
断言した諸伏に、アイリッシュは意外そうに目を丸くした。反対に河南は神妙そうな表情をする。
「大串か」
「あ?誰だそりゃ」
「喫茶店で働いている店員だ」
「……………はぁ?」
「奴の得意料理はハムサンド。しかし店のメニューにイチゴ牛乳がないのが玉に瑕だ」
「お前は何を言ってるんだ」
彼に全てを話そう。全てを話して、逃げ回るのを辞める。
反撃開始の狼煙の為に。