だが。
「やめときな、正義だ悪だと口にするのは!!…この世のどこを探しても答えはねェだろ下らねェ!!」
 唐突な第三者の声に全員が動きを止めた。ハンニャバルの後ろに、誰かいる。なんだどうしたと彼が慌てて振り返った瞬間、黒い霧のようなものが上空に出現し、その中から瓦礫や人が落ちてきた。
「きッ貴様は…」
 三又の槍を構えたハンニャバルであったが、謎の人物の強い拳を顔面で受けて崩れ落ちる。自分たちの敵である看守を攻撃したということは味方なのかとマオは思ったが、皆の雰囲気からしてどうやら違うらしい。
「あいつは……」
「だれ?」
「――黒ひげじゃ」
 その名前にマオは聞き覚えがなかったが、ルフィが肩を跳ねさせて反応する。
「何で麦わら、怒ってんノ?」
「……エースさんが海軍に捕まるきっかけを作ったのがあいつだからじゃ」
 成程、ルフィにとっては仇と呼んでも過言ではないということか。
 いつの間にか二人は戦闘態勢に入っていた。怒りに満ちた顔で次々と拳を黒ひげに浴びせてゆくルフィ。彼の予想外の強さに黒ひげは慄いているように見えた。白熱する戦いを誰もが固唾をのんで見守っているように感じたが、反してマオは苛立ちを覚えた。
「おーちっつけっ」
 マオがルフィの背中を思い切り蹴り飛ばしたことにより、戦いはここまでになる。
「何で止めるんだよ!離せ!!」
「お前ここでこんなことしてて良いノ?」
「あ?!」
「ここでこいつの相手して、エースが助かるのかって訊いてんの、キシッ」
 と窘めるものの、ルフィが止まる素振りはない。
「マオくんの言う通りじゃ」
 しかしジンベエの援護により漸くルフィは思い留まった。肩で息をしながら黒ひげを睨みつける彼は今にも襲いかからんとした様子だが、それでも頭は冷静さを取り戻しつつあるらしい。
「次の部屋って何?」
「砂漠がある」
「…さっきから思ってたけどサ、この建物の環境ってどうなってんノ」
 マオが軟禁されていた部屋には風が届いていた。そんな状況でまさか海底にいたとは思うまい。クロコダイル曰く、この建物の各階層は寒暖の差が激しいらしく、次のフロアは太陽が照りつけているらしい。まったくもって不思議な建物だ。
「あれ?イワンは?」
「ほっとけ」
 レベル2に続く階段のところで皆の誘導の為に立ち止まっているイワンコフの傍らを通り過ぎるクロコダイル(と肩に乗っているマオ)。
「どうせマゼランを食い止めようだとか思ってんだろ」
「あー、毒の奴」
「俺としちゃ、ここであいつが死んでくれたら万々歳なんだがな」
「わーサイテー」
 けたけた笑いながらレベル2に達する。可愛らしい動物がこちらに駆けてくるが、全てクロコダイルの砂により刻まれた。
「あれ飼いたかったナー」
「やめとけ、世話が大変だぞ」
 (この二人、めちゃくちゃ仲良くなっとる…)などと感心しているジンベエなど二人が知る由もない。
 さて、可愛らしい動物を蹴散らしひたすら出口へ向かっていくと、水色のポニーテール男と眼鏡男に出くわした。
「ボッボボボボスー!?」
「クロコダイル!?何でここに!?」
「ていうかその肩に乗ってるのは何だガネ?!」
 どうやら彼の知り合いらしい。話を聞く限り元部下のようだ。
「こいつら仲間にすんノ?」
「こんな雑魚要らねえだろ」
「酷いだガネ!!」
 そんな会話の中、切り裂くような悲鳴が背後から響き渡った。マゼランが追ってきたらしい。イワンコフたちが倒されたという事実は皆に衝撃を与えたものの、すぐに立ち直ったルフィはクロコダイルの元部下であるMr.3や他の仲間たちと協力してマゼランの足止めを開始した。その間にマオたちが外へ向かい、船を奪取する。
「そう上手く行けばええんじゃが…」
 ジンベエの心配は的中することになる。