この場には似合わない声音を、シャチは覚えていた。
「あっ!お、お前…!」
「……やっぱりお前だったか」
 自分たちを嵌め、マオをドフラミンゴの元へ送ろうとした少女が、そこにいた。
 己のキャプテンの予想は当たっていたのだ。
「…こいつを捜し回ってたのはお前だな」
 疑問符のつかない言葉に少女は顔を歪ませた。
「事情は説明します。だからあの……とにかく、落ち着きませんか?」
「あ?」
 ローがギロリと睨みつければ少女はお手本のように萎縮する。
「お前がこの男の差し金ってことで間違いないな?なら死ね」
「ちょっ…キャプテン!いくらなんでも話聞かなさすぎですよ!!」
 少女の細い喉をなぞる剣先を見て慌てて止めに入るが、彼の眼光炯々たるそれにシャチも少女同様竦んでしまう。怖すぎる。ヘタレな己ではどうすることもできなかった。が、そんなシャチに代わって話を進めたのは、意外にもマオだった。
「やつがれの居場所、知ってて来たノ?それともここに来たのは偶然?」
 額の血を拭う彼女の息は正常だが、それでも心なしか疲れているように見えた。
「えっと、頑張って捜し出しました」
「どうやって見つけた。言え」
「それやつがれのセリフ……」
「れっ…霊絡れいらくを辿りました!」
 シャチたちには聞き慣れない単語であったがマオは違ったらしい。僅かに眉をひそめていた。「マオ」ローが呼ぶ。説明しろと端的に述べていた。
 彼女はわざとらしく溜息をついた。
「大気中の霊気を圧縮して視覚化された霊気のコトだヨ。死神の霊絡は赤、それ以外は白に視えるネ」
「は、はい。この世界に死神は全然いないから…視覚化した時に見えた赤い霊絡はあなたのものだと思いました…」
 とにかく死神を発見するものらしい。シャチにはよく分からなかった。
「それできみは何でマオを捜してたの?そこの怖い人も……」
 今度はベポが質問する。言葉尻が消えかかっているのは謎の男を恐れている証だ。かくいうシャチもそうであるため、会話の最中こっそりマオの後ろに寄った。
 少女はそんなシャチなど眼中にないようで、ただただマオを真っ直ぐ見据えて答えた。
尸魂界ソウルソサエティに帰る手立てを見つけたから迎えに来ました!」
「……は?」
 マオにしては珍しく間の抜けた声を出した。