昼、夕方と平古場は時間が空けば梨胡に話しかけに行っていた。マネ業の手伝いをしたり彼女の仕事が終われば話し相手になっていた。梨胡は少し不思議がっていたが、平古場の行動について詮索する素振りは見受けられなかった。だがそんな彼女とは違い、平古場の行動に反応したのは白石だった。表立っては見られないがおそらく不二も気にしているだろうと木手は推測する。
「木手くん」
 梨胡と話している平古場を見ていたら、白石に呼び止められた。
「…何ですか?」
「あー…君にこういうの訊くんはあれやねんけど…」
 平古場くんって、越前さんに対してアレやんな…?
 そう訊ねた白石に木手は怪しい笑みを送る。
「アレアレじゃあ分かりませんね」
「…分かっとるくせに」
 困ったように微笑する白石に対し、木手はなんだが優越感を抱いた。だからかぽろっと口が滑ってしまう。
「俺は色恋沙汰について、あまり興味とかは無いんですが………」
「?」
「テニス以外でも青学や四天宝寺に負けるのは悔しいんでね…俺は平古場クンを応援させてもらいますよ」
 普段ならそんなことは絶対に言わない。本人の前でも。だが、なんとなく、梨胡と楽しそうに話している平古場を見ていたら、素直に応援するのも悪くないかもしれないと思ったのだ。
 白石はどことなく、木手の思いに気づいていたのかあまり驚きはしなかった。ただ、参ったなあといった感じに後頭部を掻いた。
「強敵やなぁ…不二くんも、平古場くんも」
「梨胡クンと不二クンのかつての関係には驚きましたが、最後に梨胡クンをいただくのは平古場クンですので」
「………言うてくれるやん」
 それまで困ったようなものだった微笑が、不敵なものに変わる。その様にこれは本当に強敵だと、木手は思った。
「ま、ええわ。ほな俺はこれで。おおきに」
「いえ、精々頑張ってください」
「ははは、そうさせてもらうわ」
 (平古場クン、勝ちなさいよ)去っていく白石の背中を見ながら、木手は笑顔の平古場に心中でそう呟いた。
焦れったい第三者


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