「ええ〜!コシマエだけねえちゃんに拭いてもらったとかズルいわー!わいも!わいもやって!!」
 洗濯物を全て干し終え食堂に向かえば、遠山のそんな言葉が梨胡を迎えた。箸を置いて傍までやって来た遠山は、リョーマとは違う可愛さを持つ。微笑むと遠山も応えるようににぱっと口角を上げた。
「なあねえちゃん!わいの髪も拭いてーな!」
「遠山の髪はもう乾いてるよ」
「じゃあ風呂あがり!コシマエの奴、家やったらねえちゃんにドライヤー当ててもらってんねんやろ!それわいにもやって!」
 「なっ…!」リョーマが驚きのあまり箸を落とす。梨胡も遠山がどうしてそれを知っているのか不思議に思った。
「詐欺師のにいちゃんに聞いたんや!」
「プピーナ」
 にやにやしながらこちらに視線を投げかけてくる仁王は至極面白そうだ。あとで拗ねたリョーマを宥めるのは梨胡だというのに、呑気なものである。弟のほうを見やれば案の定菊丸や桃城にからかわれていた。大石辺りが程々にしろと二人を窘めているものの、熱が下がる気配はない。これは絶対にあとで大変だ。
「やー、面倒見良さそうだしなぁ」
「!」
「わんも下がいるから構いたくなる気持ち分かるさー」
 そう述べたのは田仁志だ。そういえば彼はたくさんの兄妹がいた筈だ。梨胡はリョーマ一人で結構手こずっているが、彼はその倍大変なのだろう。
「男の子は危なっかしくて心配になるからね」
「分かるやぁー。…あ、凛やネエネエがいたよな?」
「は!?」
 突然振られた話題に平古場は肩を震わせた。そんなに動揺することだっただろうか、梨胡は首をかしげる。
「田仁志、ねえねえって?」
「姉貴のことやっしー」
「へえ…沖縄弁だとねえねえって言うんだ。可愛いね。平古場はお姉さんのことねえねえって呼んでるの?」
「よっ呼んでねーよ!」
 意地が張ったような声音に梨胡は少し面食らう。何か気に食わないことを言ってしまったのだろうか。一考してみたが分からなかった。訊いてみたかったが、それっきり平古場も俯いてしまったため叶わなかった。
誰にでも優しくしないで


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