さて、リョーマにはああ言ってみたものの、平古場は梨胡と冷静に話せる自信がなかった。緊張しているのだ。このままでは声をかけられないかもしれない。
「あっ平古場」
 だが幸運なことに梨胡から話しかけてきてくれた。
「わっ…ぬ、ぬうよ」
「さっき木手が平古場のこと探してたよ」
 なんだそんなことかと、平古場は少しだけ落胆した。
「にふぇー。永四郎、どこにいる?」
「多分部屋に戻ったんじゃないかな」
 (じゃあいいか)木手のことを後回しにすることにした。
「あのよ、時間あるなら少し話さね?」
 傍から見れば冷静そうに言っているが、これでも心臓は結構早鐘を打っている。「うん、いいよ」薄く微笑む梨胡に内心息を吐く平古場。
 広間にあるソファに座り、平古場は震える唇を噛む。彼女がいる左側が熱い。意識してるんだなと他人事のように思う。とはいえドキドキを止められることはなかった。
「ね、平古場」
 己の気持ちに悶々としていたら、意外なことに梨胡から話題を持ってきた。
「比嘉って私立だよね。平古場はこのまま高等部に行くの?」
 予想外の質問であった。
「えっ……あ、ああ…そのつもり」
「部活、続ける?」
「おー…」
 梨胡が何故そんなことを訊くのか不思議に思ったが、この時期ならそういう話題は当たり前かと平古場は思い直した。
 「やーは?」梨胡の質問に乗っかり、訊ねる。
「私は…そのつもり、だったんだけど……」
 妙な歯切れの悪さに平古場は首を傾げる。何かあったのかと訊けば梨胡は困ったように眉をハの字にした。
「私の兄さん、今アメリカにいるんだけど…」
「アメリカ!?てかやー、兄貴いたのかよ!?」 
 初耳である。「うん、皆知らないと思う。私の兄はずっとアメリカにいるし」何気に皆が知らないことを知れて優越感に浸れるが、話の軸が兄ではないことは理解している。続きを促せば梨胡はおもむろに口を開いた。
「それでね、その兄がアメリカに来ないかって誘ってきてね。悩んでるんだ」
「じゃ、じゃあ…アメリカに…?」
「うーん、青学の皆には高等部に行くって言っちゃてるけど……本当は踏ん切りがつかなくて」
 もうどうするのか決めなければならないらしく、梨胡は焦っているらしい。
リボンでも良いからその指に結いこんで


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