sweetie

私はウィリアムに甘やかされている。「それ頂戴」そう強請るとウィリアムはいつでも私に譲ってくれる。試合中の暗号機は彼が解読が苦手だからというのもあるけれど、それ以外の時だってそうだ。
今だってそう。最近サバイバーの戦績が良いからと、一人一つケーキなんていうご褒美を用意してもらっていた。甘いのが苦手な人だっているし、誰かくれないかなあ……なんて欲深い事を考えて少し周りを見回すとウィリアムがいて。ダメ元でいつもの言葉を口にした。そうしたら、彼はちょっと困ったように「俺だってケーキ食べたいけど、特別だぜ」と私に差し出してくれたのだ。やっぱりウィリアムは私に甘い。
流石に食べたいと言っていた相手から、全て貰うなんて出来なくて、私はウィリアムと並んで席に着いていた。ちょっとだけ、ちょっとだけ貰おうと思って。私は自分のケーキにフォークをスッと入れる。さくりとした感触、これはタルト生地が下にある! ちょっとしたサプライズみたいで、気分が上がる。
口にカケラを運びながら、チラリとウィリアムを見ると、彼はケーキに手を付けずに此方をニコニコと笑顔で見ていた。もしかしてあまりにも美味しそうに食べるから、譲ってくれるのだろうか。どうにも食い意地が張りすぎた考えを頭から追い出し、私はウィリアムにちょっと心配だよと自分の事を棚に上げて言葉を呟いた。

「俺が押しに弱いって?」
「だって、いつも私に譲ってくれるし」

ウィリアムの人が良いのは分かるけれど、嫌なら嫌って言わないと、私みたいなのに付け込まれちゃう。自分が彼に甘えてしまうのを治すべきだと思うけれど、この性格はなかなか治らないものだ。だからウィリアムに頑張ってもらおうと、また甘えた考えで彼をじっと見る。

「うーん。ってことは俺がアタックしてたの、気付いてないんだな」
「えっ、アタックって…。その、タックルでは」

私からの視線に、ウィリアムはぽりぽりと頭を掻く。いつもの凛々しい眉がへにゃっと垂れていた。それに気を取られていた私の耳に飛び込んできたアタックという言葉。どんな話の流れでアタックなんて……? 一瞬試合の話でもしていたかと思考が飛ぶ。困惑する私にウィリアムはニカっと笑ってから、スッと真面目な表情になる。

「冗談キツイって! 俺は本気だぜ」

本気、本気……? ウィリアムにふざけた様子はなくて、それで、私を甘やかしていたのはアタック? …………!!

「あ、ちょ……ちょっと待って!!」
「おっ、もしかして少しは意識してくれたか?」
「少しはって言うか……顔! 近い!!」

ウィリアムが言いたかった事を理解した瞬間、頭から湯気が出るんじゃないかというくらい顔に熱が集まる。ウィリアムはずっと私に恋のアピールをしていたって事!? どうしようとウィリアムを見ると、思っていた以上に顔が近い。どうやら私がようやく気付いた事に嬉しくなって、此方に身を乗り出していたみたいだ。

「へへへ、今からだ! 覚悟しとけよ、ナマエ!」

そう言い放ったウィリアムは、それあげるからな! とケーキを置いたまま食堂を出て行った。しばらくぼんやりと彼が出て行ったドアを見つめていた私は、ゆるりと頭を振ってテーブルを見た。
貰ったケーキにフォークをゆっくりと刺し入れる。一口含むとただでさえ甘いケーキが、今までの何よりも甘いものに感じた。明日からどんな顔でウィリアムに会えばいいのか……苺のように色づく頬をそっと押さえた。