じんわり

ズキズキ ズキズキ 頭が痛い。
昨日の夜更かしと天候によるものが重なったようで、今日はずっと頭痛に悩まされている。
我慢出来ない程ではないけれど、決していつものように過ごすことも出来ない。痛みが酷くなった私は談話室のソファで頭を抱えていた。部屋に戻りたいが、少し治るまでここに居よう。
ガチャリ、ドアが開く音がして誰かが入ってきた。チラと目線をそちらにやると、入ってきた人物と目があった。その人物、ルカは口角を上げると、ゆっくりとした足取りで私の隣へと腰を下ろした。

「やあ、頭を抱えてどうしたんだ? 悩み事なら私が解決してあげようか」

ニコニコと何がそんなに嬉しいのか分からないが上機嫌なルカに、頭が痛いと告げる。いつものルカはこんなにも饒舌だっただろうか。そうだったかもしれないけれど、今の私にとってはかなりテンションが高く思えたのだ。出来ることなら彼の元気を分けてほしい。

「頭痛、ねえ。そうだ、電気療法なんてどうだ?」
「……」
「へへ…冗談さ。少し待っていてくれ」

ルカが本当に電気を流す筈がないのは分かっていたし、多分冗談で和ませてくれようとしたんだと思う。ただ私がそれに応える気力を持っていなかっただけ。無言で問いに応じた私に、ルカは嫌な顔を一つもせず笑った。軽く頬を掻き、何かを思い付いたように頷いて去って行った。私は心の中でごめんと呟きながら、一つ息を吐き目を閉じた。

「珈琲だ」
「?」

軽く、本当に軽く揺すられて目を開ける。すると目の前に湯気がほんのりと立つマグが差し出されていた。どうして今珈琲を…? どうやら訝しんだ目を向けていたらしい、ルカは私の様子を見ると、僅かに視線を逸らし頭を掻いた。少しだけ気まずそうにした様子に、疑問が頭をもたげる。

「私が頭痛に悩まされた時に飲んだら楽になった…そういう実証結果がある。まあ、結局は個人によるとは思うけどな」
「……ありがとう、ルカ」

少し早口で説明されたそれは、簡単に言うと私のことを心配したからということだ。素直にそう言えばいいのに、回りくどく説明するのもルカらしい。気まずそうにした態度も、もしかしたらただの照れ隠しかもしれない。早く飲まないと珈琲が冷めてしまう。私はルカから珈琲を受け取り両手で持つ。手からじんわりとした熱が伝わってきた。匂いを嗅ぎ、こくりと一口飲んだ。

「ナマエが元気じゃないと調子が出ない。早く良くなってくれよ」

珈琲よりもルカのその気持ちが、私の頭痛を溶かしてくれそうだ。