逃す気がない

私の視線から逃れようとするナマエの顎を軽く掴み、私の方へ向ける。君から誘ってきたのに酷いんじゃないかね? なんて態とらしく問い掛ける。
さあ彼女はどうするのかと見ていれば、目に見えて狼狽し始める。きっともう一押し。
私の事が嫌いであれば無理強いはしないと、スッと手を離した。すると……嗚呼、なんていじらしいんだ! 
ナマエはおずおずと此方を窺う様に覗き込み、小さな声で嫌いじゃないと呟いた。
言質は取った、もう逃しはしない。元より逃すつもりなどなかったが、それは心の中に留めておく。
ハンターの性分? いや、違う。ただ私が執念深いだけ。
君も厄介な男に好かれたものだと自嘲し、ナマエに気付かれる前に可愛らしい唇に自らのそれを重ねた。