興味ないんじゃないの?

※ハロウィン

「興味がないんじゃなかったんですか?」

私はルキノさんから渡されたキャンディを見ながらそう呟いた。彼の元に先に訪れたサバイバー達から、興味がないから他を当たってくれと言われたと聞いていたのに、私の手の中には彼から渡されたキャンディがある。手の中でそれを転がしながらルキノさんに視線を遣る。

「ああ、興味はないとも」
「でもこれ…」

私の素朴な疑問にルキノさんは大きく頷いた。手の中のキャンディを見せたが、どうやら興味がないというスタンスを覆すつもりはないようだ。

「どうでもいい人とそのような催しに参加するのは興味がない」
「何というか、その……」 
「私らしいだろう?」

確かに興味の基準がルキノさんらしい。私となら参加してもいいと言ってもらえるのも嬉しい…が、こちらから悪戯を出来るチャンスだったのにと少し残念に思う。どうにも思ったようにいかなくて不貞腐れた表情をしていたのだろうか、ルキノさんに眉間に皺が寄っていると指摘されてしまった。
慌てて謝って、とりあえず落ち着くためにソファに腰を下ろす。少しでも気分を上げるためにルキノさんから貰った飴を口に入れた。ほんのりとした甘さが口の中に広がって、身体の力が抜ける。美味しい。どこで手に入れたのかと尋ねようと顔を上げると、いつの間にかルキノさんが目の前に立っていた。少し圧を感じて、腰が引けてしまう。

「ルキノさん?」
「ところで…trick or treat?」
「えっ!?」
「おや、君は自分が言われる事は想定していなかったのかね?」
「そ、それは…」

完全に図星だ。興味がないと聞いていたから、私が一方的に悪戯出来るものだと思い込んでいた。それにまさかルキノさんがその言葉を言ってくるとは思っていなかった。しどろもどろになる私を見て、ルキノさんはにんまりと笑った。

「お菓子を持っていない……それは残念だ」
「えーっと…すみません」

擦れた笑い声が溢れる。こういう時のルキノさんは碌な事を考えていない。さっさと自室に帰るのが吉だと考え立ち上がろうとしたが、それが叶う事はなかった。

「ナマエ、どうしたんだ?」
「部屋にお菓子を取りに行こうと思って」
「お菓子? 取りに行かなくてもあるじゃないか」

その言葉と同時に影が降ってきて、口を塞がれた。やっぱりルキノさんには敵わない。悪戯しようなんて考えなければ良かったと、甘い痺れが広がっていく頭でぼんやりと考えた。