我等は守護者である

「ベインさん! 見てください!」

その声に振り向くと、ナマエが此方へ走ってきているのが見えた。慌てて周りを見渡す。よかった、誰もいない。

「ナマエ! 危ないから走るなよ」
「大丈夫ですよ」
「それに此処はサバイバーが来るような場所じゃあねえ」
「それも大丈夫!」

言葉の通りナマエは転ぶ事なく、俺の元に辿り着いた。まあ、子供という訳でもない。それに関してはそりゃそうかと納得出来たが…此処に来たのはいただけない。何だって此処は森の中なのだから。頼むから言う事を聞いてくれと俺が口を開く前に、彼女はにこりと笑い「ベインさんがいるから、大丈夫」と話した。 

「……はあ、それでお転婆娘はどうして此処へ来たんだ?」
「えへへ、見て!」

ナマエは一瞬しゃがんで、立ち上がった勢いのまま俺に何かを突きつけた。彼女の勢いに僅かに後退ってしまう。ナマエの両手で支えられたそれは小動物のようで、よく見ると…

「それは……俺か?」
「正解です! 小さなお供のベインさんです」
「そうか」

俺、か。確かに俺の面影はある。しかし、俺にしちゃあ随分と可愛過ぎねえか。じっと小さな“俺”を見つめていると、ナマエはどこか浮ついた様子で此方を伺う。

「どう?」
「どう? そりゃ可愛いさ」
「やっぱりそうですよね!」
「ナマエがな」
「へ、」

望み通りの言葉が貰えたと喜んだナマエに、俺は少しばかり意地悪をする。勿論それは本心だが。俺の言葉を理解したらしい彼女の顔が朱色に染まった。それと同時に力が抜け、小さな俺はナマエの手から降り立った。思わず溢れそうになる笑い声を押し殺し、彼女の頭をわしわしと撫でる。 

「か、帰る!」
「待て!」
「ベインさん…」

この場から逃げたかったのかナマエは慌てて踵を返した。俺はそんなナマエの腕を掴み、静止の言葉を掛ける。俺を見上げる彼女は睨んでいるつもりかもしれないが、耳まで真っ赤で迫力が全くない。

「行きは良かったかもしれねえが、もし帰りに何かあったらどうするんだ」
「……ベインさんが、いるから…大丈夫」 

俺から視線を外しながら、ナマエは先程と同じ言葉を呟いた。流石にこれ以上可愛いと伝えてしまえば、拗ねて口を聞いてくれなくなるかもしれねえ。そう考えた俺はゆっくりと口を開く。

「そうだな、お望み通り…いや、俺が心配だから一緒に行かせてくれ」

コクコクと頷く彼女の足元で、小さな俺は胸を張って彼女を見上げていた。まったく誰に似たのか、そいつもナマエを守りたくて仕方がなかったらしい。
俺が強く撫でたせいでボサボサになったナマエの髪を軽く撫で下ろし、彼女に行くぞと声を掛けた。ナマエに着いて行く“俺達”は彼女の騎士となったのだ。