どうして来ないの?

「何で来ないんですか!!」
「な、急にどうしたのかね。落ち着きたまえ!」

ルキノさんの部屋のドアを力強く開けて、彼の元へと勢いよく歩いて行く。急に部屋を訪れた私に驚いたのか、彼の声が僅かに上擦る。どうやって部屋に入ったのかと訊きたげなルキノさんの視線を無視して、目の前に一通のメッセージカードを突き付けた。ちなみに部屋については、とある人に頼み込んだとでも言っておこう。

「これ! これだけ渡してルキノさんは出てこないんですか?」
「これ……? ああ、それか。ナイチンゲールに今年のクリスマスに何かしてくれと頼まれたが……まあ、私自身そのような催し物に興味がなくてね」
「じゃあルキノさんは会場に来ないんですか…」

メッセージカードを見たルキノさんは数回瞬きをして納得するかのように頷いた。本当にこれを用意したのか彼のようだが、言葉の通りもうこれ以上は参加する気はないようだった。折角ルキノさんとクリスマスを祝えると思ったのに、落胆して思わず溜息が溢れる。

「そんなに残念かね」
「ええ、残念ですよ。ルキノさんと楽しめると思ったのに」
「そうか……」

私の言葉にルキノさんは黙り込む。しばらく思案した彼はフッと息を溢して、私をじっと見つめる。

「ルキノさん?」
「本当に出てきてほしい?」
「そりゃそうですよ!」
「私がその催しに参加しなければ、君と二人で過ごせると言っても?」
「……!」

さあ、君はどうしたい? 口角を軽く上げたルキノさんは意地悪な質問を投げ掛けた。そんな事言われたらもう答えは一つしかないのに!

「ずるい」
「おや、知らなかったのか。私はそういう輩だよ」
「やっぱり…行かなくていいです」
「素直なナマエ。私は君のような素直な子が大好きさ」

ルキノさんの大きな手が私の頬を緩く撫でる。先程まで私が押していたのに、今や彼のペースだ。持っていたカードがするりと抜き取られ、机に伏せて置かれた。

「だが、勝手に部屋に入る悪い子にはお仕置きが必要だ」

そうにんまりと笑ったルキノさんから逃げようにも、尻尾が巻き付き身動きが取れない。勢いで生きるのもいいが、ある程度計画は必要だと上機嫌な彼の腕の中で考えた。


2022年クリスマスイベ7日目終わった時点の話