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はい、音楽室からダッシュして5分後、現在理事長室です。雷門さんに柚の運動部引き抜き発言について相談しに来ています。


「…色々バタついてるのは把握してたけど、まさか吹奏楽部に…その、ある意味での人的被害が…ここまで偏っているなんて…」
「はい…もう、本当に予想外の事態で…とにかく、なんとか本番を乗り切る為にも、最低15人くらい欲しいんです…!」
「なるほどね。ちなみに、何故対象が運動部なの?」
「同じ初心者でも、運動部の方が肺活量はあります。元が苦肉の策ですから、せめて勝率をあげたいんです…いや、どうしたって無茶苦茶な案ですけど」


沈痛な面持ちの柚、ちょっと頭が痛そうな千歳と雷門さん。そして穏やかな所作の場虎さんと、窓際でうろちょろする僕。


「ひゃ〜うっわすっご!場虎さん今の見ました?!」
「ええ、とても光っておりましたね」
「……なまえ?何してるの?」
「ここ、サッカー部の練習めっちゃ見えるから見てる。千歳見た?ドラゴンいたよ?」
「話を聞きなさい」


お話は柚達に任せて、場虎さんと一緒にクッキー食べながら校庭見てたんだ。謝りつつも、やっぱりサッカー部に目がいってしまう。…や、別に暇つぶしに見てるわけじゃないよ?理由はあるんだよ?

最近妙に思ってたんだけど、やっぱり気になるんだよね、サッカー部の動き方。ちゃんとできていれば、もっともっと綺麗に動けるようになると思うんだけどなあ。


「あら、何ができれば綺麗になるの?」
「…えっ?何で僕の考えてることわかるの、雷門さん…?」
「貴女、全部口に出していたわよ」


そっかー口に出てたかー!パート練、基本的に1人なのが寂しくて身についちゃった独り言の多さ…悪癖だわ。早々に直そう。
とにかく、言わない理由もないし、何故か雷門さんの顔が真剣だし。


「サッカー部なんだけど、ここ最近の様子見てると、有り余る体力をフルに使えてないんじゃないかなぁって…なんかこう、消化不良みたいな」
「ああ、なんか…修也が家で、妙に悩んでたような」
「ああ、じゃあ、やっぱ気のせいじゃないのかな?…うん。それで、その原因はたぶん、呼吸かなって」


思ってたんだ…と、続けたまさにその瞬間、雷門さんの携帯から着信音。
画面に目を向けた彼女は、申し訳なさそうな顔をして言った。


「ごめんなさい、急用で出かけることになったの。準備をお願い、場虎」


畏まりました、と出て行く場虎さんに手を振った。またね場虎さん。そしてその瞬間にも光り輝く窓の外。なんか燃えてる鳥飛んでない?やばいね?


「さて…今回の件、合宿や留学制度の生徒選抜の配慮に関しては、こちらの監督不足が原因です。ごめんなさい」
「いえ、そんな…夏未さんも忙しいのに、こちらこそごめんなさい」
「いいえ、落ち度は落ち度だから。今までの吹奏楽部の活動功績も充分な物です。よって今回、臨時での引き抜きを理事長代理権限で許可します」


…まっっっじで?!
予想外のご快諾に目が飛び出そうだ。我らが部長の全力のガッツポーズが眩しい。


「やったー!あ、ありがとうございます、夏未さん!」
「ただし、本人の意思を尊重すること。それから、お詫びとして他にも設備…楽器とかになるかしら、その辺りの援助も手配しておくわ」
「か、神様…本当にありがとう…!」
「いいの、私もみょうじさんの指摘で思い付いたことがあるから。こちらこそありがとう」
「え?そうなの?」
「ええ。私にも引き抜きの心当たりができたから、また明日連絡するわ」


意識がサッカー部に飛んでいた間にバタンとドアが閉まる。何、僕ってば役に立てた…らしい?ならいいか。

というか、ダメ元かと思いきや…引き抜きの許可出ちゃった。しかも援助つき。なんてことだ…予想以上の成果である。地道に活動してきて良かった…!


「ほ、ほんとによかったぁぁ…!やったよ千歳ー!」
「そうと決まれば…!柚、明日から2人で勧誘しに行こう」
「おー!!…えっ2人で?僕は?」
「アンタあっちこっちに意識飛ぶんだもの。留守番してなさい」
「oh……がっでむ……」



総譜は何処
(とにかく、見つかるといいなぁ)

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