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僕は留守番中につき、いつも通り外を見ながら練習中…からの、現在小休憩中。もともとサックスパートはほぼ1人な状態で、完全な楽器ごとのパート練でも基本的に1人だ。
一応もう1人いるけど、残念ながら色々と事情があるらしく、そもそも学校に登校することが珍しいという筋金入りの幽霊部員だ。演奏会とか本番が近くなると割と高確率で登校&部活参加をしてくれるんだけど…最後に来たのは体育祭だっけか…?すっごい上手いしいい人なだけに、滅多に会えないのが残念で仕方が無い。
「おーい、なまえー!」
「え?」
ぼやっとしてた所で、突然廊下の方から名前を呼ばれた。ばたばたっと駆けてくる足音が聞こえる。聞き覚えのある声の持ち主だ。具体的にはそう、サッカー馬鹿な幼馴染に似たような。
ガラス越しに見守っていると、想像した通りの人影が、僕に気づいて扉を開ける。
「突然ごめんな!」
「えーと、守?どうしたの?…いや待ってとりあえずそこでストップね!」
入ってきた幼馴染こと、円堂守は砂だらけの泥まみれ、練習してる時のままの格好。あっちょ、楽器が汚れるのはダメだー!
サックスを安全な所に置き、カバンに突っ込んであった予備のタオルを引っ掴み、守を連れて廊下の水道へ。手を洗ってくれ。
「練習じゃないの?あとこれで手と顔は拭いて」
「サンキュー、明日返すな!今は休憩中…というか、ミーティングしてる。最近、チーム全体の調子がおかしくってさ」
「ほうほう。守はそれ、出なくていいの?」
タオルを渡して相槌を打つ。余計に守がここに来た理由がわからなくなった。大事なミーティングの最中に、キャプテンが抜け出して今ここにいるのはまずいのでは…?
「一応、休憩兼ねてるからさ。俺はその間に呼びに来たんだよ。この後は30分に切り上げてもう一度模擬試合…ってもうこんな時間だ?!とりあえず行こうぜ!」
「は――?!!」
何もわからないまま手を繋がれて全力疾走開始である。待ってホントに何で?!本人の意思は?!!というかさぁ!!!速過ぎて足浮いてるんだけど何これ?!!…あっまってまって酔った気持ち悪い。
「まも、ちょ、とまっ…うぷっ…ちょうじげんかよ…」
諦めるしかなかった。超次元の適用はどうか用法用量を守ってサッカー限定でお願いします。
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んで、連れてこられたのはサッカー部の練習場所。超次元スピードで来たためまだ休憩兼ミーティング時間は終わっておらず、へたりこんでいる僕はサッカー部の皆さんから微妙に注目されてます。そしてサッカー部、ちょっと思ってたけど、間近で見ると全力で個性のぶつかり合いみたいな様相を呈してるね!
「ま、守…いい加減、何なのか説明して…うぉぉ気持ち悪い…」
「あ、言ってなかったか?」
「ふざけるなよばか」
僕の休憩時間を返せ。これで用事まで理解の及ばぬ超次元な内容だった暁には、借りてきたトランペットの一番高い音を最大音量で吹いてやる。耳元で。
「いや、さっき夏未から連絡で…あ、夏未ってわかるか?雷門夏未、ウチのマネージャーなんだけど」
「大丈夫、流石にわかる。それで…?」
「おう!よくわかんないんだけど…練習になまえを連れてきてみてー、ってさ」
「僕を?サッカー部の練習に…?え、理由とか、他に何か言ってたりとかは…?」
「あー…あ!あと、場虎さんが是非頑張ってくださいねって言ってたって」
「わかった守、よくわかんないけど!僕でいいならとことん付き合うよ!」
場虎さんには、実の所いつもお世話になってる。めっちゃ優しいんだ場虎さん。そんな場虎さんが是非頑張ってなんて言ってくれるなら、僕は!!頑張るよ!!
そう意気込んで守とわいわいやってると、後ろから鬼道くんと染岡くんがやってきた。染岡くんからぴりぴりした視線を感じる。
「円堂、こいつは?」
「俺の幼なじみで、吹奏楽部のみょうじなまえ!夏未の指示で今日の練習に付き合ってもらうことになったんだ」
鬼道くんは怪訝そうな様子をしつつもそうかと頷き、すぐに守に向き直る。ミーティング結果を話してるみたいだ。
しかし、染岡くんは僕を一瞥してこう言い放った。
「今、俺達は真剣にやってんだ。部外者が下手なことして邪魔すんじゃねーぞ」
「…はーい」
やばい、なんかこう、テンプレかな。何のとは言わないけど、熱血漫画的なアレの。しかしコレ実際言われると確かにめちゃくちゃカッチーンてくる。カッチーンて。
…君の気持ちはわからないでもない。わからないでもないですけども、ええ、染岡くん!僕は!残念ながら!超お子様なので!煽りや喧嘩は安値のものから高値のものまで基本的にお買い上げいたします!
幸い、隣の守と鬼道くんの話を聞いていて、夏未さんが、昨日の会話を経て…僕に何を試してほしいのかは、たぶんわかったし。
なら早速やってみようとも。練習風景は遠目からだけどさっき確認済みだ。まずは…器用と噂の松野くんと、そばに居る半田にお願いしてみようか。
「ちょっとごめん、松野くんに半田ー」
「あ、さっきキャプテンに振り回されて倒れてた子」
「あれ、みょうじだったのか。何しに来たんだ?」
「ちょっと守と雷門さんに頼まれまして見学に。…で、えっとね!」
かくかくしかじか、ごにょっとごにょっと。
2人とも不思議そうな顔をしたけど、やってみるだけならと了解してくれた。うん、これでよし!
「よーし、練習再開するぞー!」
丁度、守の掛け声で練習も再開。ちらっと染岡くんを見れば相当不機嫌な顔。思い通りに動けない所に、僕はみたいな部外者が踏み込んできたせいだろうけど。まあまあ落ち着いて、喧嘩せずに行こうじゃない。…アッ今舌打ちされ…コッルァ楽器ケースで殴り掛かるぞ!!
速さはMarch
(あっもちろん楽器入ってない状態のやつね)
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