--バグ主B


・シンクの片思い(両片思い)
「バカじゃないの」「えへ…ごめんね」
シンクからすれば、エンコード後の記憶のリセットと植付けが起こった夢主はもう別人だろう、と。死ねと言われているのと同じと解釈。姿形が同じだけの別人で、そいつは今の夢主のレプリカでしかないだろう。
「ふざけるな…そんなの、絶対に認めない」
アンタじゃなきゃ、意味が無いのに。

自分がレプリカだからこそ。それを認められない。
けれどもし、エンコード後の夢主を認めない…元の夢主と別人だと思うなら。オリジナルとレプリカを、同一としないのなら。「それはシンク自身が、一個人である証明にはならないかな」


・ドラム/16~19(学生)

・経緯
救世軍のアジトにいるお手伝いさん…的な賑やかし担当(自称)。
明るく誰にでもよく絡むが、一方でストレスは割と溜めやすい。なお相手の絶対に許せない琴線近くには踏み込み過ぎないように注意はする。してるだけで踏み抜くことも割とある。殺されないようにはしてる。

※1部以前~2部後半までは救世軍(か鏡士陣営)にいる。3部か2部ラスト辺りでなんやかんやあってメルクリアかデミトリアスの所に捕虜??的にいるかも。その場合は記憶ぶっとんでてもいい。メルクリアに懐かれてる


バグはバグでも特異鏡映点の性質を薄らと持つ変なバグだった。あくまで鏡映点ではない。
原因は具現化で弾かれた時、弾かれた先が少しばかり過去(本編前)のティル・ナ・ノーグだったから。その関係でマークに拾われたイクスとミリーナにも会ってる。

ストレスがもろに反映された時は死ぬタイプの生理重いマン担当でもあるので、バグ主の中でものちのち体調的には一番問題が出てくる。

最初はどっかの村でお世話になってたものの、その村の一人が救世軍所属で先日から「世界のことを知らなさすぎる」妙な奴がいると報告され目をつけられる→程なくマーク主導の監視目的で救世軍でお世話になることに。バグっぽいことと特異ぽいことがあったのでファントムにも目をつけられてるが、とりあえずバイト感覚でアジトのお掃除とかしてる。

誰とでもよく絡む日常の一環でシンクと関わりを持つ。ただつんつんしてるー!かわいいー!唯一の私より年下の子だー!と頻度が他より多くなる。歳近い後輩(?)に構いたい症候群。当然ウザがられる。

最初はキレられないうちに退散するヒットアンドアウェイ戦法を取っていた。長く続けるうちになんとか時々からかい寄りの皮肉を飛ばされる程度にまでは落ち着く。この夢主ちょっと音痴なのでクソ程下手だなってしみじみと純粋に哀れまれたのが一発目。なお100%の悪感情による罵倒はこの時以降無くなった。気づいた時にはガッツポーズした。

ある程度経った頃、女子不足問題により救世軍の「やってること」の手伝いとして捕虜の世話係になった。この時、自分と似た境遇の人(ユーリ相手のバグ主)がいることを聞く。
同時に救世軍やることえげつなさすぎるのを直接目の当たりにしてストレスを抱え出す。捕虜、つまりマリアンいい人だしでめちゃくちゃ辛い。事(8章)が済んだ時、マリアンとリオンが逃げ出せたことに安心した。


その後も変わらず賑やかし担当(この頃には他称)として振る舞うものの、監視されてる扱いの自分もいつ道具にされるか(そんで殺されるか)わからんのだなと改めて認識して自覚なく精神が不安定になる。ファントムにも色々つつかれる(アンチ系魔鏡具の実験。副作用でメンタルに悪影響が出る)。

救世軍メンバーから、なんか変だな〜でもいつも通りで気のせいか?と思われることが増える。絡まれる率トップ(外野調べ)のシンクとしても変調があることには気づいてたけど、鏡映点は基本動き回って任務してるから決定打は掴めず。
なお、バグ主としてはシンクにだけは絶対気づかれたくない。自分勝手だけど、一番距離を縮められた気がする相手だったので。そんな相手に切り捨てられる自分は流石に見たくないので必死。



ある時、誰もいない自室で一度気を失う。生理前。目覚めてから、これ自分、今のお掃除係すらできなくなったらどうなるんだろ〜完全に役立たずじゃん?そうなると今以上に実験されたりとか捨て駒とかにいよいよされるんじゃん?死ぬじゃん?とヤケクソ気味にネガティブ思考。体調悪いのも絶対バレないようにしようと改めて決意。発想が野生動物的。

翌日、生理が来る。普通に腹痛い。気持ち悪い。鏡の中の顔色が明らかに悪い。しかし休んでは役立たずである。
なので今日から本腰入れて埃っぽい所を掃除するぜ!と宣言し、マスクを付けて顔色誤魔化す。実際に掃除する。床冷え過ぎてガチめに死にそう。人がいない間にのたうち回って掃除して、終わった後=人通りが出始めてからは再度元気の猫被り。ただし掃除し過ぎてのど痛い〜って誤魔化してマスクは続行。
シンクに突っ込まれると顔隠れてんのお揃いじゃん?「どうせなら仮面貸してよ面白そう!」と冗談めかす。「冗談じゃないね」と大仰に肩を竦めて立ち去るシンク。ばいばーいと別れを告げて、いつもならそれで駆け去って終わる。だから、本当に偶然。

「…ああ。そう言えば、アホ神子が食堂で騒いで――」

シンクが振り向いたところで。
生理が重い、クソ程貧血。頭がふらついて、駆け去るはずの脚がたたらを踏む。壁に添えられた手。顔の上半分、ちらと見える肌の色が、見間違いかわからないが、尋常ではなく白い。
仮面の下で顔を顰める。この気配は、何かに似ていた。そうだ、大嫌いな、消えていったレプリカ達のような。貧弱な…弱すぎる気配だ。


「……やっぱり、ヘンだね」


内心で悲鳴を押し殺す。ヒュ、と鳴りかける喉の音を抑えて、違和感のないよう、元気な声を絞り出す。


「やっ…、そ、れは酷くない?確かに転びかけたけどさぁ!今、靴裏ホコリ凄くて滑るんだってば」
「そうじゃない。一体、何隠してる」
「…え…、」
「……もしかしてアンタ、…」
「っあーーっなんでバレたの!?シンクの仮面剥ごうとして転んだこと…ご、ごめんって」


遮って叫んだ言葉を、自分の頭で噛み砕く余裕もない。無理矢理だ。頭がこれ以上回らない。何かしら言い募られそうな所で、ええいとにかくおふろ!!次はバレないようにする、またねー!!等と無理矢理誤魔化して走り去る。くそ腹痛い。バレたのか、どうなのか、そもそも何を隠していたのだか、怪しまれているのか、自分はもう何をどうすればいいのだか、わけも分からないくらいに怖くて堪らなかった。
シンクからの好感度はこの時点で高めで互いに片思い未満の段階。

生理が終わる。のに体調が戻らない。普通に無理をし過ぎたのと、ファントムくんが脅して渡してきた妙な物のせいである(特異鏡映点の性質持ちなのを確認する為の魔鏡具)。いよいよやばいのではと夜は一人で泣いてる。日中普通。割と限界越えてる。流石に誤魔化しきれずにやっぱ様子おかしいのが伝わって心配されてるのに、不安定過ぎて疑われてるようにしか受け取れない。一層違和感で心配されてっていう超悪循環が始まる。

そしてすぐにまた生理が来る。不順開始。死にそう。
周りとしては相当心配。実際のところ、この時点で賑やかし担当やら誰とでも仲良くしていたのが功を奏し普通に仲間として好感度が高いので(ファントム側からは好感度でなく研究対象としての需要だけども)、捨て駒ルートはまず無くなってた。
ぶっちゃけ夜間の監視とかもほぼ形骸化している訳で。知らぬは本人ばかりなり。
そんで夜、部屋のお布団手前で2回目の気絶。ファントムくんが部屋にアンチ系(効果は軽め)の魔鏡具仕掛けていたのが発動した為負荷が限界を越えた。

翌日、昼を過ぎても姿が見えないってんで誰かしらが様子見に行くとぶっ倒れてる。大慌てで医務室直行。監視の形骸化がこんな所で仇になるとは誰も思ってなかった。
こんだけ騒いで目覚めないのやばくない?と医務室ではらはらする下っ端仲間の一幕。酷い貧血、睡眠不足、過労。度合いが酷い。
貧血と睡眠不足の原因は、言わずもがなストレスとそれに端を期した生理不順。それと過労診断の原因は魔鏡具実験の負担によるもの。男所帯な組織で貧血の直接の原因=生理という点に思い当たれるかはわからないけど、とにかく絶対安静。
一段落した後、かくかくしかじかで、相当前から我慢していたと思う…という報告を受けるマーク。度が過ぎるだろと頭を抱える。『倒れるまで我慢するって野生動物か、あいつは』。ご最もである。
そこに立て続けて、第二報。


「なんかっ早々に目覚ましたとおもっ思ったら、目離した隙に医務室抜け出した!!!!」
「あいつか?今度は何だ?」
「俺らが声掛けたらなんかめっちゃ走って、窓から飛び出していっちまった…!!自分の部屋の!!!」
「…まて、二階だよな?!本当に動物かよ…!」
一段落なぞしていなかったのである。


普段よりもどことなく落ち着かない雰囲気のアジト。帰ってきたシンクがどこを歩いてみても、いい加減に聞きなれた声が聞こえない。ところがどうも二階あたりが騒がしい。アイツの部屋があるのも二階。
覗いた夢主自室、窓も扉も開け放たれたまま空っぽ。反対側の階段を駆け下りていくメンバー達。
なんだか嫌な感じがした。

マークの元に報告に向かうと、めちゃくちゃ騒がしい。うるさ、と思う間もなく響く声。


「下に落ちたのか?怪我は?」
「見たら居なかったんだ…今フレデリック達が探しに行ってる」
「野生動物の称号つけてやる…とりあえず捕まえたら報告しろ」


返事からすぐに駆け出す奴らを見送り、早足で部屋に入る。シンクか、と頭が痛そうな顔のマーク。


「お疲れさん」
「報告。問題なし異常なし。それで何事なワケ」
「シンク、お前途中であいつ見なかったか」
「…何、急に」
「昼前に部屋でぶっ倒れてんの発見されて、ヨハン曰く絶対安静だと。それがついさっき、目離した隙に抜け出して二階の窓から飛び降りして逃走中」
「………………ハ?」
「俺もさっぱりわからん。絡まれ率ナンバーワンだろ、なんか心当たりねえか」


なるほど、通りであの部屋の窓も扉も開けっ放しだったわけか。


「知らない。逃げ出せるんなら元気なんじゃないの。そのうちお腹減ったとかで戻ってくるでしょ」
「なら良いんだけどな。聞く限り、走る所じゃねえ体調の筈なんだが…ただとにかく、逃げるってのが頂けねえ。アイツは監視対象なんだぜ」
「…今更?」
「ああ今更だな。…まあいい、引き止めて悪かったな。とりあえず次は予定通りだ、それまで休め」


気をつけろ、という言葉を投げられるままに踵を返す。自室へ戻るつもりが、気づけば再びバグ主の部屋の前。相変わらず開け放たれた無人の部屋は、ずいぶん冷え込んでいた。

気をつけろなんて、誰に向かって物を言っている。万一があったとして、このボクがあんな奴に万一の遅れをとる訳が無い。自惚れではなく、事実だ。あんなアホに。

窓から外を見渡す。部屋の主は帰ってこない。ボクに心当たりなんてある訳がなかった。
だってそうだろう、アイツの様子が可笑しいのなんて、ここ最近ずっとだ。誰がどう見たってそうだった。

だから、それ以外の特別に心当たりなんてあるわけが無い。ボクには関係ない。



だから。だから。
外を駆けているのは気まぐれだ。探そうなんて、見つけようなんて思ってない。ただ、もしも偶然目に留めることがあったなら、ついでに連れ帰ってマークに突き出すくらいはするけど、それだけ。

先程踵を返して部屋を出る直前、それに気付いたのは本当に偶然で。飾り気のない部屋の隅に、不自然に転がる何か。
――使用限界を迎えた、ファントムの魔鏡具の欠片。

部屋で踏み砕いたその魔鏡具が一体何だったのか吐かせる為、ただそれだけだ。




一方その頃のバグ主。
何故逃げだしたのか自分でもよくわかっておらず大混乱。自分倒れた=役立たず=死…?とかいう超ハイスピード思考が咄嗟に為されたが、冷静な思考がさすがにそれはないと主張してるのもわかってる。でも怖い。限界を迎えて飛び降りた。怪我しなかったのは割と奇跡。
※実はファントムくんによるアニマに負荷をかける思考操作実験のせいだったりするかもしれない。逃げ出せだったのか、指定した場所に行けだったのかは不明。色々ある

怖すぎてかつ体がしんどすぎてもうぼろぼろに泣いてる。森の奥で息を潜めて、もう死んでもいいかなくらいまで思考が乱れている。実際問題体調的に死にそう。

お礼くらい言って死ぬべきだったかもとか、痛いのやだなとか、寂しいなとか、ざわざわざわざわして。

なんでこんなことしてるんだろうって、そう呟いて涙が流れる。気持ち悪さに頭がぐわんと揺れて、いよいよ意識を手放したくなってきた時。


「何してんの」


とさりと、背後に何かが着地した音。がさりと足音がする。比喩でなく息が止まった。振り向けない。

追われているっぽいことには気づいていた。魔鏡具の影響か、やたら耳が良いのだ。何人か探し回っている気配がしていて、何故なのかわからなくて怖かった。監視されていた身の上なのだから、逃げた以上捕まったら、痛いのかなって。
でも、シンクまで。…でも、でも。シンク、なら。

もう、逃げる気もなかったし、そんな体力も無かった。喉奥に鉄の臭いがして咳き込む。…うわ、きたない。


「おかえり、シンク」


シンクに捕まるの、めっちゃ痛そうだし、容赦がなさそうだ。偏見だったらゴメンね。
振り向いた先の視界が歪む。耳鳴りが酷くて、頭が割れそうに痛い。いつの間にか地面が近い。ついでにシンクも近い気がする。何か言われてるの、全然わかんないや。わかんないから、返事…返事かな。もう、いいたいことだけ。

「わたし、しんじゃうなら、おねがい、シンクがいい」

殺されるならあなたがいいな、なんて!

――ばりんと音がして、そこからの記憶はない。



ーーーーー

なんやかんやでシンクにより回収。シンク視点では明らかに様子がおかしい。やたら怯えると思ったらあからさまに逃げる気無くすわ、血吐いたと思ったらおかえりなんて言い出すわ、直後に倒れ込むわで。
極めつけに、死んじゃうなら…等と、妙なことを言い出して。

ーーーーー

「何してんの…まァどうでもいいけど。ホントざまぁないね」
「あ、…」
「アンタと違ってボクは忙しいんだからさぁ、手間取らせるな。さっさと立て。帰るよ」
「おか…えり、シンク」
「何、」
「わたし、しんじゃうなら」
「何を」
「おねがい。シンクがいい」
「……、ハ」
「ころされるなら、あなたがいい…な」



きっと何も聞こえちゃいなかったんだろう。
ただ、見るからにボロボロな様に皮肉を飛ばし、帰ることを告げただけだ。なのにどうにも噛み合わない。逃げようとして、動けなくて、血を吐いて、次にはおかえりなんて宣って、そして。

死んじゃうなら、殺されるなら自分がいい、なんて。

そのまま倒れ込む姿に一拍遅れて気がついた。最後の言葉に、らしくもなく動揺していた。…どうして、やろうかと思った。


とにかく、明らかに普通じゃないのはわかった。結局魔鏡具の詳細はわからないままだが、回復させないことには吐かせるのも無理だろう。
抱えあげた体、その服の内側から、ひび割れた魔鏡具がころりと零れる。部屋に落ちていたものと同じものだった。


ーーーーー




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