そろそろ寝るか、と一緒に寝台へ入った。
冷えている彼女の足へ自分の足をくっつけてやると、「あったかーい」と表情が綻ぶのが愛らしい。
ページを捲る手が止まらないみたいに他愛のない話が尽きず、けれどそれがふと途切れる瞬間がある。決して居心地の悪いものではなくて、互いに交わした言葉や共有した気持ちが器いっぱいに溜まったから、という充足感からくる沈黙。
目が合い、彼女の眦が日を浴びた猫のように、とろんと下がる。そうして、伸ばされた手が中也の首を撫でた。口下手で奥手な彼女からの"誘い"の合図だ。彼女は無意識なようだが、その誘いには首筋を撫でたり、チョーカーに触れたり、顔を寄せてそこへ埋めたり、と特徴があった。指摘すれば、こんないじらしい誘い方はもうしてもらえないかもしれない、と云えずにいる。云ってしまってからの彼女の反応も見てみたいけれど。
瞳の中にある微睡みにも似た甘いぬかるみへ踏み込む。果実を頬張るように彼女へと口付けた。角度を変えては重なり合う接吻が、徐々に熱を帯び始める。こぼれる吐息ごとまた食らう。
「は、っ、き、きゅう、けい」
「息すんの、大分上手くなったな」
「……中也が手加減してくれてるからそう感じるだけだとおもう」
「一昨日は悪かったよ、がっついちまって」
責めてはいても咎めはしない膨らんでいるその頬を優しく潰せば、ぷす、と間の抜けた音が出た。「明日に響かないよう、善処します」と、この先へ進んでいいかの許可を請うと、じと目がまた柔らかくほぐれる。彼女の躰の線を辿りながら酸欠にならないよう、ゆっくりと口内へ舌を忍ばせた。
「好き」
器から溢れてしまったみたいに接吻の合間で囁かれた彼女の言葉に、胸の奥であたたかいものが揺れる。彼女が中也にくれる感情を都度飲み干しているから、この喉から出る声はいつだって平らかで少しの引っ掛かりもなく、優しいものだと自分でも感じるのだ。
「俺も、好きだ」
好きで好きで、仕方がない。どうしようないほど焦がれていること。巨大な水槽を前にした彼女を想像する。
まだお前は、俺の気持ちのほんの表層しか知らない。
腕の中で嬉しそうに微笑んでいた彼女が、中也の手の動きに反応して甘く鳴いた。
忠誠がすみずみまで宿っている心には、すっかり彼女も棲みついている。
どう足掻いたって逃がしてはやれねぇな、と思いながら、自分をより深く刻み込むようにもう一度彼女の口を塞いだ。