5:世界が広がる音がした


手紙、書きますね。両親に丁寧に挨拶をしてからレギュラスに軽く手を振るケイトを横目に欠伸をひとつ。

かなり早い時間に駅に着いたからコンパートメント自体は空いていたものの、ケイトはルシウス・マルフォイのコンパートメントに招かれそちらに行ってしまったため、一人で寂しく窓の外を眺める。
俺も誘われていたらしいが、行ったところでイライラするだけなのでケイトに全てを押し付けることにした。そんな気はしてた、と苦笑して上級生ばかりであろうその息苦しい空間に一人で向かう片割れの背中に若干の罪悪感が湧かない訳では無いが、親の目がないにも関わらずそういう奴らと仲良くする気は無い。まあ、親の目があったところで態度に大した違いは出ないのだが。

窓の外を眺める事に飽きてトランクの中から本を読み暇を潰す。思ったより面白くなくて__というよりおそらく一度読んだことのある本を持ってきてしまった__早くも飽きかけたときに来客があった。

「ここ空いてる?何処もいっぱいでさ」

パーティーで見た事のない顔だったのでどうぞ、と快く迎え入れる。ネクタイの色からして1年生だろうか。
本当?ありがとう!と言いいそいそと入ってきたくしゃくしゃの髪をしたメガネの少年の荷物を上げるのを手伝ってやり椅子に腰を落ち着ける。

「僕、ジェームズ・ポッターって言うんだよろしくね」
「シリウス・ブラックだ。よろしくポッター」
「やだなあ同い年でしょ?これからよろしくするんだしジェームズでいいよ」
「じゃあ俺もシリウスで」

家名で呼ばれるのは嫌いなんだ、と言葉を交わしているといつの間にか発車していたらしく、車内販売が来たので昼食と、ついでにいくつかお菓子を買い込む。

「君はどこの寮に入るつもりなの?」

そういえば、と前置きしてから僕は当然グリフィンドールだけどね!と言った目の前の男は確かにグリフィンドールのイメージに当てはまる。そうか寮、か。

「アー……家族は全員スリザリンだった」
「へぇ、そうなんだ。君はまともに見えるけどな」
「本当か?なら俺が伝統を破ってやる」

小さく笑って目の前のお菓子に手をつける。主に母親が嫌いでほとんど食べられなかった百味ビーンズだがこれはなかなか当たりの味らしい。ラズベリー味のそれをゆっくり食べながら、カエルチョコレートに苦戦しているジェームズとの話に花を咲かせる。家がいかに息苦しいか、とか双子の兄が割と良い奴だとか。ジェームズの家は純血主義では無いらしく密かに羨ましく思っていたら、休暇は僕の家に来るといいと言ってくれたので凄く嬉しかった。


ケイト以外で俺を"シリウス"として家柄関係なく見てくれる人は初めてだったので少しこそばゆい思いをしたが、これはこれでなかなか、いい。
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2020.7.20