──2005年7月某日
マイキーと再会してからは色々なことがあった。邂逅以降はほとんど犬として動いていた
マイキーから誘われた東卍の集会にはまだ行けていないが、ソレは追々で構わないのだ。元より、優先順位もそれほど高くない。
そんな、どうでもいい人間だと思われない程度には親交を深めようとして、何かと理由を付けて東卍ツートップと顔を合わせる中で。ポロッと「私」なんて一人称を使ったら──一緒に居た龍宮寺共々きゅうり猫みたいな顔になったこともあったか。
アレは笑ったなァ。元々誤魔化しているとはいえ、まさか幼馴染まで誤魔化せてしまっていたとは。
どうも認められなかったらしい龍宮寺からは「ソレ、余計に胡散臭いぞ」なんて言葉も聞こえてきたけれども。マイキーの
もう既にコンプレックスではないとはいえ、その失礼極まりない視線には思うところもある。デリカシーがなさすぎた。そんなところまで真一郎君に似なくて良いだろうが。
──で。どうして今、そんなどうでもいいことを思い出しているのかといえば。学校からの帰宅途中に見た、我らが長兄からのメールを確認して始めた現実逃避に他ならない。
件名は『サブローに客』。内容は『アッくんって奴がサブローに会いてえんだって』だ。これには現実逃避もしたくなるだろう。
兄は今日も揃って六本木に居るはずで。そんな片割れからこんなメールが届いたからには、その場にはアッくんも一緒に居るはずで──マジで六本木で何してんだアッくん。何がどうなったら少年院上がりの不良に捕まってしまうのか。
そもそも、"六本木の灰谷兄弟"を知らないのか。相手の顔面を陥没させた挙句の傷害致死だぞ。あの利用できるものなら何でも使う稀咲ですら、未だに
──いや、まァ、知らないのだろうな。アッくんは山岸君ではない。わざわざ私に会いに来る時点で山岸君の話も聞き流されていそうだ。
可哀想な山岸君。あれ程までにしっかり調べを付けて、その上で自分の身を省みず、大切な仲間を守ろうとしたのに。と、当然これも現実逃避である。
そうして、舌打ちの代わりにひとつ息を吐いて、携帯の時計表示を確認する。長兄からのメールが届いたのは二分前、今から帰って支度をして向かうとしても十分は見ておいた方がいい。それまでの間、アッくんをどうすることが最善なのだろうか。
あの日、山岸君に『治安最悪』とまで言わしめた六本木で、見たままに不良である彼を一人にするべきではない。
かといって、まだ一緒に居るのであろう兄達と待たせることもできれば回避したい。絶対に絡まれているはずなのだ。族にも入っていない子に、十二分近くもあの二人の相手をさせることは荷が重いだろう。でも──。
ひとしきり悩んだ後、腹を括って次兄にメールを送ることにした。できるだけ急いで支度するから、頼むからそれまで我らが長兄様を制御しておいてくれ、と。
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