29.突撃隣の千堂敦

「……千堂、サブローが『十分で行く』だって」
「はァ? 客だって送ったのはオレだろ」

 途端に明るい顔になる妹の客は「アイツマジで何なの?」なんて、不満を隠そうともしない兄ちゃんの様子を見て、少しだけ身を固くした。──まァでも、この内容であればオレに送って来ることにも納得が行くのだ。
 口には出さなかった後半曰く、到着するまで手を出さないように抑えておいてほしい、と。余程急いだのか、抜けている言葉を補うとすれば『サブロー・・・・が到着するまで、兄ちゃんが千堂に手を出さないように抑えておいてほしい』だろう。

 そうはいっても、既に兄ちゃんは千堂に絡んでいるのだ。比較的和気藹々とした今の様子からしても殴ることはないだろうけれど、絡むことすら『手を出さないように』に含まれるのであれば既にどうしようもない。
 一応『無茶言うな』と送り返しはしたものの。急いでいる様子が分かる文面からして、オレのメールには気付かれないと見た方がいいか。

 携帯を閉じ、隣に座る兄ちゃんに気付かれないようにこっそりと息を吐いた。横暴な兄と無茶苦茶な妹に挟まれると辛いときもある。今がまさに、その状態だった。



 いつもの様に兄ちゃんと二人で六本木にいたら「あの!」なんて言って、正面から走って来た中坊がいた。それがこの千堂だったのだ。

 一度近くで兄ちゃんを見て、オレを見て、もう一度兄ちゃんを見て。しょげた様子で「すんません、やっぱ大丈夫ッス」と帰ろうとする不良が、この六本木で誰を探しているのかはすぐに分かった。
 兄ちゃんの顔とオレの体格、あとは目線の位置だろうか。それぞれを近くで確認して、ようやく探しているらしい人ではないことが分かる人間なんて一人しか知らなかったから。

 髪色や服装は全然違うが──まァ、サブローがオレらの舎弟を名乗り、かつわざと・・・オレらに寄せた背格好にしている以上、わざわざこの六本木でオレらに声を掛けてくる理由としては十分だった。ただの人探しではなく、サブローへのお礼参りであればよくあることでもある。

 あとはお察しだ。面白がった兄ちゃんが「サブロー探してんの?」と囲い込み、分かりやすい反応を見せてしまったソイツを近くのカフェに連れ込んだ。いつもの微妙に怠いお礼参りとは雰囲気が違ったことと、オレらが灰谷兄弟だと知らずに声を掛けて来たことも興味を引かれる原因のひとつだったのだろう。
 あーあ、可哀想に。──心のどこかではそんなことを思っても、面白がって止めなかったのはオレも同じだったわけで。

 そうして、簡単な自己紹介から始まった千堂との話は思った以上に盛り上がった。何せ、オレ達と千堂の間にある共通の話題なんて一つしかない。滅多に聞くことができない、他人から見た可愛い妹の話が盛り上がらないわけがないのだ。

 兄ちゃんの「一応呼び出したけど、アイツ学校あるしすぐには来れねえよー?」の言葉には「学校、ちゃんと行ってるんですね……」なんて呟きが返ってきて、兄ちゃんと揃って爆笑した。
 確かにサブローが学校行ってるとか想像できねえよな。アイツ実は真面目なんだよ──とは流石に、気合いを入れて品行方正な女子中学生と性別不詳な胡散臭い不良を分けたがっている蓮のためにも言うつもりはなかったが。

 蓮からのメールが返ってきたあとは、千堂がどうして六本木まで会いに来たのかを聞き出した。なんでも、二週間ほど前の手当てと、そのあとで助けられたかもしれないことへの礼をしたいのだと。
 手当ての方は、族にボコられていたところにサブローが来て手当てをして帰って行ったらしい。千堂が仲間とリンチされている様子を眺めるだけ眺めて、相手が帰ってから手当てをしに来たと。

 ──どう見ても不審者だろとの感想は、無理にでも一旦飲み込むことにした。千堂の話はまだ終わっていない。

「……助けられたってのは?」
「オレらその族に喧嘩賭博させられてたんスけど、途中でトップが出てきて開放されたんです。サブロー君が近くに居たことは遠目に見えてたんで、もしかしたらサブロー君がトップに情報流してくれたのかなって……」

 こう言い切ってしまってはなんだが、話を聞いた限りではやはりただの不審者だ。愉快犯的なサブローとしてのキャラ付けも相まって、どう想像しても不審者だったのだ。
 しかも何か食いながら見てた気がするって何だよ。もうそれただの観戦だろ。

 後半に関しては「もしかしたらってだけなんで、コレは本当に手当ての礼のついでなんですけどね」なんて言ってはいるが、それでも手当てをしてもらっただけの不審者を追いかけてくるなよと思ってしまう。しかもわざわざ、この六本木まで。

 ふと、少し気になって「どこ?」と聞けば「渋谷っす」との声が返ってきた。渋谷のデカいチームといえば東卍ではあるが、サブローは東卍とも繋がりがあったのだろうか。しかも二週間は前には既に──なるほど、さっぱり分からない。
 結局は「アイツ渋谷で何やってんの?」なんて言った兄ちゃんと、顔を見合せて首を傾げただけに終わった。何せ、基本的に自分のことは聞かれるまで話さないのだ。辛うじて、今日の放課後は家で寝るということを聞かされたが──それも、寝たいから連れ出してくれるなよという意味だった。つまり、どうしても通したいワガママがあるときにしか話さない。

「いやー……アイツマジ自分のこと言わなすぎだろ」
「それな? 人の予定はちゃっかり把握してるくせにさァ」
「……オレらと喋ってるときもそんな感じでした。聞き上手っていうか」
「ま……ソレはそうだろうな。情報屋が聞き下手だったら終わりだろ」
「それはそうなんですけど……確かその、面白くもない自分のことを話すのは苦手、みたいなことも……」
「……あー、なるほど」
「苦手、なァ……」

 微妙な反応しか返せないオレたちに「違うんすか?」と焦りを見せる千堂には申し訳ないが「本人から聞いたことねえし分かんねえよ」という、これまた微妙な返ししかできなかった。何せ蓮がそう言うンなら、そのときはそうだったンだろうな、の感情しか湧かないのだ。
 観察していればそれなりに分かりやすいところある妹でも、流石にそれが全てだとは思わない。言われなければ分からないことだって当然あるし、ノリと気分で適当ぶっこいていることだって普通にあるのだ。

 でもまァ、思い返してみれば。初めて蓮とまともに言葉を交わしたあの日、あのトマトの味噌汁を食ったあと。蓮自身のことを聞いたときも、他の話題よりもずっとたどたどしく話し辛そうにしていた記憶がある。
 なるほどなァ、アレはそういう理由もあったかも・・しれないのか。面白くもない自分のことを話すのは苦手、な。当然面白いかどうかの基準は蓮の中にしかないわけだが、確かにそんな理由であれば納得できなくもない。

「で? 何でソレでわざわざ礼なんて言いに来たんだ? 不審者……手当てだって二週間は前なんだろ?」
「んふ、りんどーついに不審者って言ったなー?」
「兄貴はちょっと黙ってて」
「あ?」
「痛ッて! 何!? どうせ兄貴だって思ってンだろ!?」

 机の下で脛を蹴られて悶絶するオレを無視して、兄ちゃんが「それで?」と続きを促した。いや、仕切りたがりなのはいつものことだけれども。もうキレて良いだろコレ。蓮に釘も刺されてるしキレねえけど。

 そうして。よくぞ聞いてくれたとでも言いたげな、やたらとキラキラした表情で話し出した千堂に、兄ちゃんと揃って片眉を上げた。
 曰く、丁寧な手当ての他に、自分は乱れていた髪のセットまで直してもらった。
 曰く、手当ての途中でかなり話したらしいが、そのときの様子は後から聞いたおっかなさとは全く違ったものだった。
 曰く、周りの呼び方を聞いて自分を「アッくん」と呼んだあと、嫌だったら呼び方を変えるから言ってくれとまで言われた。
 曰く、それまでの胡散臭くも使いこなされた敬語と、途中で出た素であるらしい喋り方のギャップが刺さった。
 曰く、曰く。

「それでその、漠然とかっけえなって思ったんです。どんな噂がある人かってのはダチに聞きましたし、正直、見たままの人でもねえンだろうなとは思ったんですけど……それでもかっけえなって」
「……例えば?」
「具体的に何がどうって言うのは難しいんすけど……気まぐれでも他人に親切にできることとか、髪のセットみたいな細かいとこまで見れるとか、人が本当に嫌がってるかもしれねえことはしねえとか。ボコられてたオレらをビビらせないようにだと思うんスけど、要所ですげえ気使ってくれてたこともすげえなって思いましたし……あとはオレらが必要以上に恐縮しねえように、ずっとフランクに会話を回してたのも、」
「待て待て待て、多い多い」
「……すんません。ぶっちゃけまだあるんスけど、それが全部っス」
「まだあんのかよ……」

 相変わらずのキラキラとした目で拳を握って、本当に心の底からそう思っている様な。具体的に言うのは難しいとまで言った割の、早口で捲し立てる千堂の様子に頭が痛くなった。
 少し照れた顔をして「セットついでに頭撫でてもらったんですけど、その手がすげえ優しかったのも頼れるアニキ! って感じで……」なんて言われたからには──もう、頭を抱えるしかないだろう。

 何せ、いつかに聞いた外でやっているらしいサブローの語り口とそっくりなのだ。一度家でさせたこともあるから間違いない。
 何なら正直、サブローのソレよりも熱意が色濃くも聞こえる。しかも本当に『まだ』あった。どれだけ語るンだコイツ。

 性別に関しては別に構わない。本人なりの理由があって誤魔化している以上、わざわざオレらが訂正すべきではないから。
 それでも誑し込む相手くらい絞れバカ。これでは流石に千堂が可哀想だろうが。サブローとは違って設定ではなさそうなところがより可哀想だ。コイツ、どう見てもガチだぞ。

 そもそもの話、千堂は悪名高い不良を捕まえて何を言っているのか。しかも噂はダチに聞いたんだろ。それでこれかよ。
 もっとちゃんと教え込んでおけよ、なんて。頭の中で顔も名前も知らない千堂のダチをタコ殴りにしても、だからどうなるという話でもないのが辛いところだ。

 ついでに言えば、オレが知る蓮の印象と乖離がありすぎることも頭を抱える要因の一つだった。確かに間違いなく気は回るし、親切に見えるときもある。敬語と敬語を抜いた言葉遣いにギャップがあると言えばその通りだし、慣れないうちは色々な意味でドキッとする気持ちも分かるのだ。
 ──異母兄妹どころではない程度に濃く血の繋がった妹相手に、一体何を言っているのかという感じではあるが。ソレはもう慣れたから良いんだよ。

 それでも、普段の様子を知っている身として違和感を拭えないことに変わりはなく。敬語なんて「普段との印象の差を付けたい」みたいな尤もらしいことは言っていたとて、ほとんどただのノリだとも言っていた。敬語が面倒になったときは普通に外れることもある。変なところで雑な奴なのだ。
 たまの親切も基本は打算があるか、もしくは自分以外の他人が心底どうでもいいから適当に接するだけで。──コレは蓮とそっくりな兄ちゃんも言っていたから、実際にその通りなのだと思う。

 呼び方だってそうだ。自分にそう呼ばれることを嫌がっているかもしれない名前で呼んだ場合に、報復として自分があのダサい名前で呼ばれたくないだけなのだ。
 頭を撫でたのは──もう知らねえ。どうせ一人で気ィ張ってた千堂が小動物にでも見えたんだろ。アイツは基本的にそういうところがある。野良猫に警戒されて楽しそうに笑っている様子だって、たまに見かけるのだから。

 脳内でぐるぐると回る違和感から抜け出したくて隣を見れば、兄ちゃんも顔を覆って変な声で唸っていた。そりゃあ、そうもなる。

「……揃ってどうしたんすか」
「千堂の夢壊していい?」
「夢……? ハイ」
「まずアイツ、オマエらの前で敬語抜いたのはそんな殊勝な理由じゃねえ思うぞ」
「……え?」
「しかも、人がマジで嫌がることも平気でやる。慣れると敬語でもしっかり口悪いし、皮肉も死ぬほど飛んでくる」
「エ!?」
「……ま、これはサブローに限った話ではねえけども。喧嘩するなら人が嫌がることしてナンボだし」
「そうそう、竜胆なんてこの前金的されてたよなー?」
「き、金的……?」

 兄ちゃんは一旦思考を放棄することに決めたらしい。だからってオレに火の粉を飛ばすな。
 とはいえ、これ以上考えて沼に嵌りたくない兄ちゃんの気持ちも分かるのだ。「アレは笑った」なんて言って思い出し笑いをする横顔を睨みつつ、事実ではあるので肯定だけしておいた。

 確かにこの間、起き抜けでお互いにそこそこ機嫌の悪かったときに喧嘩をした。つい癖で肩を外したら、お返しとばかりにそこそこの威力の金的が飛んできたのだ。
 ぶっちゃけ喧嘩の理由なんてもう忘れたし、肩を外したことは流石にやりすぎたかとも思ったものの。金的を本気で嫌がらないと思われているのであれば、可愛い妹相手でももう一度喧嘩をふっかけることもやぶさかでない。

 だいたい、あのよく回る頭を使って何かをするときは大概えげつないことをしているわけで。不良の世界で便利な・・・情報屋としてのし上がった奴が、そっくりそのまま千堂の言う様な面だけであるはずもない。ソレ自体は千堂も分かっているとは聞いたが、それでも。
 ──いや、まァ、確かに死ぬほど好意的に見ればそうも見えるかもしれないけれども。妹が好かれているらしいことは普通に嬉しいけれども。そうではなく。

「そもそもアイツが何の目的もなく渋谷まで行くワケがねーんだよ。何か言ってなかったか?」
「何か、親友と遊んでたらしいッス」
「…………あー、ね」

 思わず溢れてしまった「半間か……」の呟きは、自分で言うのも何だがかなり低い音だった。「エッ」と固まってしまった千堂には「気にすんな」とだけ言って続きを促す。こっちの話だからマジで気にしなくていい。
 何せ、わざわざ──歌舞伎町でも六本木でもなく──渋谷まで遊びに出かけるくらいの親友に、未だに会わせてもらえていない事実がちょっと心にキているだけなのだから。『顔を知られてるから会わないでほしい』なんて理由は理解しているが、オレらの可愛い妹が世話になっている挨拶・・のひとつくらいはさせてほしいのに。

 次いで聞かされたのは、曰く『どう見てもただのリンチだったから心配になって』という、何とも言えない理由だった。

 ──百歩譲って、全くの嘘ではないのかもしれない。兄貴としては、アイツにも人並みの良心が残っていたと喜ぶべき場所なのかもしれない。
 だとしても、どう見てもなリンチを平気でする奴の言葉であるとは到底思えなかった。

 詳しいことをもう少し聞こうとして身を乗り出したところで──オレらが座るカフェのボックス席に影が差した。嘘だろ、メール来てからまだ十分も経ってねえよ。

「……ンで兄貴・・も一緒になって絡んでンだよ」
「サブロー君!!」
「やあアッくん、この間ぶりですね」

 挨拶もそこそこに「何されました?」と首を傾げた辺り、この十分弱の間でオレらが何もしていないわけがないと思われているらしく。

「何もしてねーよ」
「絶対嘘ですよね」
「何で嘘吐く必要があんの」
「は? 嫌われたくないからじゃないんですか?」
「……………………クッソ、何も言い返せねえ」
「あの、サブロー君、本当に話聞いてもらってただけなんで……」
「……へえ?」

 「金的だけはやめてあげてください……」なんて。可哀想な程に顔を青くした千堂の静止で、蓮はようやくドスまで効かせた声をしまいこんだ。オレらにゾッコンな舎弟の設定は何処に消し飛ばしたのか。

 空いていた千堂の隣に座って「それで、話って? 脅されてません? カツアゲされたとか関節外されたとか」と言った蓮は、本当にオレらへの信用がないらしかった。千堂だって話してただけっつってただろうが。
 とはいえ、オレらの普段の様子を考えたらそうもなると納得できる部分はある。それでも、自分の兄貴への信用はないわけ? みたいな文句は山ほど出てくるわけで。

 ──いやでも、確かにオレも何を考えてるか分からないときの兄ちゃんへの信用とかないワ。しかもこの間には普通に蓮の肩外したばっかだしな。人のことは言えなかった。

「マジで普通に話してただけだって」
「そうそう、途中で兄貴が思い出し笑いしてたくらいだっつの」
「思い出し笑い……?」

 ドン引きした表情を隠しもしない蓮の様子を無視し、兄ちゃんは下手をしたらまた笑いがぶり返しそうな様子で「この間の金的」と内容を補足した。自分で振った話だとはいえいい加減にしてほしい。「ああ、アレですか」なんて遠い目をする蓮も蓮だ。マジでいい加減にしてほしい。
 いやでも、ここで「まだ使えます?」みたいなことを聞かれないだけマシなのか。多分、この場に千堂が居なければ普通に聞いてくる気がする。当然バッキバキに現役だが。何の話だ。

「……ならアッくんは何しに来たんですか?」
「どうしてもこの間の手当てと、オレらを解放してくれたことの礼を言いたくて……」
「解放……?」
「マイキー君に話流してくれたのってサブロー君ッスよね」
「あー……や、アレはこっちの都合でやっただけですし。気にしなくて良いですよ」
「それでも礼くらい言わせてください。本当にありがとうございました!!」
「これはこれは、ご丁寧にどうも」

 早くオレらと千堂を引き離したいのだろう。「じゃ、こんな治安の悪いところからは帰りましょうか。送りますよ」と、サラッと伝票を持って腰を上げた蓮を見て。礼の他には何も言い出す気配のない千堂を眺めて。
 それから、一度兄ちゃんと視線を合わせ──「ちょっと待て」なんて言って二人を引き留めた。

「せ……"アッくん"、まだ言いたいことあんじゃねーの?」

 サブローにそう呼ばれたと話したときの千堂の様子から考えるに、千堂はサブローにそう呼ばれることを全く嫌がっていない。
 蓮自身、特に邪険にしている様子もない千堂が「嫌がっているかもしれない」と思いながらも、ずっと"アッくん"呼びを崩していない。いや、特に手放しで気に入っている様子もなさそうだが。それはそれ、これはこれだ。

 その辺りから考えても、千堂がオレたちに名乗った本名は教えていないとみて構わないだろう。だったらオレらから"アッくん"の本名を教えてやるべきではない。

 そうして。いじらしい眷属候補に向け、妹とよく似た位置にある目元をキュッと細めた。

 そもそもの話、千堂がオレらに声を掛けてきたここは六本木なのだ。礼を言うためだけ・・に単車も持たない、徒歩圏内に住んでいるわけでもない中学生が来る街ではない。蓮だって、明らかにそれを理解した上で無視していた。

 やっぱ夢はもっと徹底的に壊してやるべきだったかなァ、なんて。──ま、そこはまた追々で良いか。この調子であれば、どうせ長い付き合いになるはずだ。


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