サブロー君から聞かれたことは三つだ。何のために
どれを取っても、この人の中ではオレがタイムリーパーであることは確定事項であるらしい。──大正解だよチクショウ。
とはいえ、聞かれたからといってそう易々と明かせるはずもなかった。誰にも言っていないタイムリープのことを何故か知られているから、だけではない。ナオトには味方に引き入れろと言われている人ではあるけれど、未来でも散々に言われていた人に洗いざらい話せるワケもないのだ。
「……」
「黙秘ですか?」
「すみません……」
「別に構いませんけど……」
サブロー君は困ったように頬を掻いて、それから「やっぱこっちのやり方の方が良いか……」と言って視線を遠くに投げた。次は何が──
「タケミチ君は、マイキーに人を殺させないために戻ってきましたか?」
「ッ……」
「……そのために、場地圭介が死なないようにしたいと?」
「なんでそこまで……!?」
そんなことまで既に立てられている計画の内なのか? なんて。内心でガッタガタに震えつつ、ちらりとその表情を盗み見て見れば──どうも、分かりやすく喜んでいる様にも見えて。マスクの上から口元を覆って再び「マジか……」と呟いた微かな音を聞いて、ようやくカマを掛けられたのだと察することができた。
「いやー、そっか……そっか……」
「……何ですか」
「や……まず、タケミチ君はどこまで知ってるんですか? 次に黙秘したら肩外します」
「急に怖ァ!?」
「ははっ! 残念ながらコレが堕天使の通常運転ですよ」
眉を下げて「コレでも肩嵌め治すの上手いンですよ?」と笑う堕天使相手に、これ以上の黙秘を続けられるはずもなく。そもそもこの人は雑誌掲載すらまだされていないらしいエピソードを細かく知っていて、次の抗争でマイキー君が本当に人を殺してしまうことも知っていて。なおかつ、オレが聞かれたことを否定できなかったときも嬉しそうだったのだ。
つまり、この人が同じ目的を持っていそうなタイムリーパーであることは確実だった。だから──ソレはもう、洗いざらい吐いてしまったのだ。
未来では、何の罪もなかったヒナが何度も殺されていること。ヒナを殺し続けているのはアッくんであること。アッくんのバックには半グレになった東卍が居ること。東卍が半グレになったのは稀咲がマイキー君を操っているからだということ。稀咲のタガがなくなり、マイキー君が操られる決定打になったのは、次の抗争にきっかけがあること。
具体的には場地君が刺殺されて、マイキー君が一虎君を撲殺して、サブロー君がマイキー君の罪を被って死んだから。──オレはそれを止めたくて、ナオトをトリガーに握手で何度もタイムリープを繰り返している、と。
途中途中では「そんなことが……」とか「それは……」みたいに、絶妙なタイミングで絶妙な相槌が入った。ヒナがアッくんに殺され続けている話をしたときは視線を落とし、次の抗争の話をしたときには息を詰め、膝の上で手を組んだ。自分が死ぬと聞かされたときに、思わずといった様子で漏れ聞こえた「死ぬんだ……」なんて硬い声が、やけに耳に残って。
やっぱり──この人は、良い人じゃないか。優しくないとか、人に興味がないとか。散々な言われようだったけれど、現に
そんな様子に、本人が隠したがっていることをあまり言うのも、なんて思って。性別と本名についてだけは言わないままで口を閉ざせば──「え、終わりですか?」なんて声が聞こえてきた。拍子抜けしたような音だ。
「ハイ、コレで全部です」
「本当に?」
「……本当です」
「へぇ」
何かを考えるように空中を見つめていたサブロー君は、しばらく黙った後で、困った様に小さく笑って。「そんなに肩外されたいんですか?」なんてことを言い出した。──まさか、気付かれて。
「場地圭介と、羽宮一虎と、
「それで、とは……」
「新聞にしろテレビにしろ、それだけの死者が出た抗争が報道されないわけがないですよね。インターネットの掲示板だって動くはずです。つまり?」
「……」
「……オーケー、腕出してください」
「分かりました言いますごめんなさい!!」
やっぱ怖えわこの人!! 両腕を掻き抱いてガタガタと震えていれば、視線だけで「早く」と続きを急かされる。言うので肩外すのは勘弁してください。
「その、サブロー君の性別と、それが本名じゃないってことも知ってます」
「……あ、名前もか」
「え?」
「そういえばトリガーは直人君でしたっけ。アレ、でも今回で会ってないよな……?」
そう言ったサブロー君は、また何かを考えるように空を見て。「ふむ」とひとつ呟いた後で、ゆっくりとこちらを向いた。
「では対価の方を。何がお望みですか?」
──こういう律儀なところ、情報屋って感じするよなあ。
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