61.明日はどっちだ

 ──2005年10月31日

「あ、今度サブローも大将に呼ばれてるから」
「んー……」
「聞いてンのかオイ。大将から何か言われんのオレなんだからな? 絶対来いよ!?」
「おー……」
「兄ちゃーーん!! 今日の蓮ダメだ!! 全ッ然まともな反応しねえ!!」
「今更ー? 蓮がぼんやりしてんのは割といつものことじゃん?」
「それは……そうだけど!!!!!」

 いつも通り支度中に声を掛けてきた次兄には、いつも以上の曖昧な音を返して家を出た。最低限動ける余力は残しておけ、なんて意味ではあるのだろう。ただ正直なところ、それを約束することすらも無理な話で。
 何せ、今日はついに決戦の日だ。今度、どころか、明日のことすら分からない。祭り抗争明けで動けるかどうか、というよりも、明日以降は生きていられるかどうかすら分からないのだ。それは曖昧な反応にもなろう。

 ──さて、今日は決戦の日だとはいえ普通に平日だ。テストも昨日に終わっていることであるし、比較的優等生で通していた学校には体調不良で休む旨の虚偽連絡を入れた。
 この日のために優秀な成績のキープと、生徒会だって頑張っていたのだ。実際に気圧でダウンしている姿も見せていたからか、案の定な心配の言葉はあっても疑われることはなかった。

 まァ──少なくとも電話口では、であるが。ウチの学校はそういうところがある。こちらとしても今日を邪魔されなければそれで良かったから。

 一度思考を止め、スゥ、と少し冷えてきた空気を肺いっぱいに吸い込んだ。頭痛はない。体も冷えていない。頭もそれなりに冴えている。
 つまりはコンディションオールグリーン。乗り慣れたワルキューレに乗って、被り慣れたミラーシールドのフルフェイスを被って。そうして目指すは廃車場──今回こそ、失敗は許されない。


top小説top