話をきくと、虎杖くんはその特級呪物の宿儺の指?とやらを比喩表現じゃなく物理的に飲んだ?食べた?らしい。どういうこと……
「キッショ!!ありえない!!衛生観念キモすぎ!!」
「んだと?」
「これは同感」
「え、虎杖くん、それって大丈夫なの?お腹とか壊さなかった?」
「んー、平気。ピンピンしてる」
目の前の虎杖くんはにかっと笑って元気に力こぶを作って見せてくれた。制服でみえなかったけど。
「君たちがどこまでできるか知りたい。ま、実地試験みたいなもんだね」
「実地試験……」
「野薔薇、悠二、名前、三人で建物内の呪いを祓ってきてくれ」
「げ」
「は、はい!」
「名前は素直だね〜」
初顔合わせでいきなり実地試験。いや、別に今日が顔合わせだけで終わるとは流石に思ってなかったけどいざこうして「いまから呪いと対峙してもらいます」みたいな宣言をされると緊張してしまう。
みんながどういうスタイルの術師さんなのかはまだわからないけど、多分わたしよりは呪霊と戦ったことありそう……足をひっぱらないように、できるだけ頑張ろう。
わたしは一人気合いをいれると、野薔薇ちゃんたちと一緒に廃ビルの中に足を踏み入れた。
「あ〜〜ダルっ なんで東京来てまで呪いの相手なんか……」
「?呪い祓いに来たんだろ」
「時短時短。二手に分かれましょ。私と名前は上から1Fずつ調べるからアンタは下から」
「そっちが二人?」
「当たり前でしょ?名前は私と一緒の方がいいわよね?」
「う、うん……」
正直どっちでも頑張ることには変わりないから特にこだわりはないんだけど、なんだか野薔薇ちゃんの視線から拒否権がなさそうなかんじがしたので流されるまま頷いた。
わたしの返事に満足したのか「さっさと終わらせてザギンでシースーよ」なんて言ってる。いいな、お寿司……じゃなくて!その前にまずここを終わらせてから考えよう……
「ちょっと待てよ。もうちょい真面目にいこーぜ。」
「呪いってあぶねーんだよ。知らんのか」
ちょっとお寿司のことを考えてるうちになんだか二人がギスギスし出した。初めての顔合わせ直後なのに…!!
「最近までパンピーだった奴に言われたくないわよ!!さっさと行け!!」
「今日ずっとお前の情緒が分かんねーんだけど!!」
「だからモテないのよ」
「なんで俺がモテねーって知ってんの!?」
「行くわよ、名前」
わたしを呼んで野薔薇ちゃんはさっさと1Fへの階段をのぼろうとする。虎杖くんもぶつくさ言いながらB1への階段を降りようとする。まって、その前に。
「い、虎杖くん!」
「んぁ?苗字、早く行かなくていーの?」
「ええと、手を出して!」
「?こう?」
首を傾げながら差し出してくれた虎杖くんの右手をぎゅっと握って呪力を籠める。
「これで大丈夫!がんばってね!」
「??おう」
「名前ー!何ぼさっとしてんの!置いてくわよ!」
「ご ごめん野薔薇ちゃん!野薔薇ちゃんもこっちきて!!手を出してほしい!」
「?」
「わたしの術式ね、手で触れたひとに一回だけ加護…ええと、なんて説明すればいいかな……ざっくり言うとね、どんな攻撃も一回だけ守ってくれるの。一回だけなんだけど、切れちゃったらもっかい触れればまた一回使えるんだ」
わたしの術式は曽祖母譲りらしい。父も母もおじいちゃんもおばあちゃんも呪霊は見えないし、術式も使えない。だからはじめは呪霊が見えることもちょっと不思議な力がつかえることも信じてはもらえなかったけど、母方の祖母のお母さんが同じ力を使えたらしくて、おばあちゃんは「ばぁばのお母さんと同じことができるのねえ。名前ちゃんはすごいわねえ」ってほめてくれた。
「へー!便利!ありがと!」
「そういうことだったのね。すごいじゃない。」
「へへへ…」
だからこうしてわたしの力を“わかる人”に使ったのは初めてだったし、感謝してもらえるのは嬉しかった。
「てことは名前は戦闘するタイプの術式じゃないのね。加護もらった分名前は私が守ってあげるからね!頼りなさい!」
「た 頼もしい……!よろしくおねがいします!!」
わたしの術式、みんなの役に立つといいな。