結論から言うと、野薔薇ちゃんも虎杖くんも、すごかった。
野薔薇ちゃんの芻霊術法は戦闘特化で追撃もできて、虎杖くんは類稀なるフィジカルとスタミナ。
一方のわたしはというと二人に一回だけ術式を使ったがあとは野薔薇ちゃんに守られているだけ。ほぼ無傷で今回の任務を終わらせた彼らに術式をかけ直す必要などなかった。いや、わたしの術式が必要ない状況なら当然それに越したことはないというのは尤もなのだが、「あれだけ意気込んでおいて」「これじゃあ居てもいなくても一緒じゃないの?」とわたしの心の中で誰かが口々に言う。
「苗字、どったの?寿司そんな好きじゃない?」
「あっ、いや……!ちょっと考え事してただけ!」
「考え事?」
折角五条先生に連れてきてもらったお店だが、あまり箸が進まない。別に美味しくないわけじゃないはずなのに今はそんな気分にはなれなくて。
そのことに虎杖くんが気づいて気を遣って話しかけてくれる。少し迷ったものの、ここで誤魔化すのも変な気がして、今日思ったことをやんわりと吐露した。
ぐるぐると自分の中で渦を巻いていたことではあるがいざ口に出してみると一層自虐的で心に薄暗い影を落とした。
「初日なんだし、そんなもんじゃない?俺は苗字の術式すげーって思ったし。」
「私が名前を守るって言ったんだから当然よ。気にすることない」
「……俺も今日先生と外いただけだから。」
「そんなこと言ってられるのも今のうちだよ〜!今回のはザコだったけどもっと強い呪霊と当たったら名前の術式は引っ張りだこだからね。バリバリ働いてもらうよ」
あまり重くなりすぎないように、なんなら聞き流してもらうくらいのつもりで言ったのだが皆がそれぞれフォローしてくれてわたしはいい級友と担任に恵まれたんだ、と実感する。
胸のあたりがじんわりとあたたかくなって、ぽたりと雫が落ちた。一度落ちた雫は続いてぽた、ぽたと増えていく。あれ、こんなはずじゃなかったんだけどな。
「あー!先生が苗字泣かした!」
「ハァ……」
「私の名前を泣かしてんじゃないわよ!!」
「えぇ〜〜!?」
そうだよね。まだ初日だもんね。
わたしにはわたしのできることをしよう。術式を使わなくていいならそれに越したことはない、必要になった時にこの力を使えばいい。いや、優しいこの人たちが笑っていられるために使いたい。
掌でぐいっと涙を拭って、湯呑みのお茶を煽る。
「…ありがとう、みんな」
次こそ挽回してやる。そう意気込んで手元のお寿司を口いっぱいに頬張った。