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※高専時代


「五条悟〜〜〜!!五条悟はいねが〜〜〜!!!!」

廊下は走っちゃいけません、小学校中学校で聞いたような言葉だけど今は緊急事態なので廊下を走ってもよいです。

「んだようるせーな……」
「わたしの!!!!プリン!!!!食べたでしょ!!!!!!!!」
「はぁ?食べてませ〜〜ん」
「しらばっくれんな!!硝子は甘いの好きじゃないし傑もそんなにだし七海はそんなことする子じゃないし灰原はわたしと一緒に任務!!よって五条悟!!お前が犯人なのはわかってるんだよ!!プリン!!プリン返せ!!!わたしがこのクッソ暑い中頑張った任務のあとのご褒美にしてたプリン!!!」
「いやマジで俺じゃねえ」
「じゃあ他に誰が居るっていうわけェ!?」
「ごめん、それ私だ」
「え」

すまん五条くん、冤罪だった。

「てっきり悟のだと思ってつい」
「おい俺のだったらいいと思ってたのかよ!」
「代わりの一緒に買いに行こう、好きなの買っていいから」
「い 一緒に……!?」
「私が一人で買って口に合わないものだとお詫びにならないと思ったんだけど……やっぱり許してもらえないかな」

五条くんと同じくらいはあろうかという大男だがこうも露骨にしゅんとされるとめちゃくちゃ罪悪感がある。
何を隠そうわたし苗字名前は夏油くんのことがすきなのだ。
その夏油くんと二人でお買い物(プリン)って実質デートと言っても差し支えないのでは??例えそれが高専から歩いて10分のコンビニでもわたしからすれば往復20分もデートしていいんですか!?というかんじである。

「で、どうする?」
「い 行こう!」

五条くんが「俺の詫びプリン忘れんなよ」とわたしに言ってきた気がするがわたしの頭はそれどころじゃないのだった。

「あちぃ……」
「ほんとに。今日の最高気温いくつだろうね……」

靴を履き替えて外に出るとさっきとは打って変わって茹だるような暑さがわたしたちを襲った。
一歩日陰から出るだけで体感5℃くらい違う気がする。夏油くんは代謝がいいのか表情は涼しげだがもう汗が滲んでいるようだ。なんかえっちだ……

「そ それにしても意外だったな〜!夏油くんも甘いもの食べるんだね!」

話題選びにこんな困ることあったっけ!?というくらい雑な切り出し方になってしまった。
ただでさえ色気3割増しの夏油くんな上、普段お互い五条くんや硝子ちゃんと一緒だから二人きり、というのはなかなかなくてドキドキする。

「うーん、甘いものが好きというわけではないけど嫌いではないよ。たまに無性に甘いものが食べたくなることはあるかな」

うおお……話題がプリンなのはわかっているけど夏油くんの口から「好き」とか「嫌いじゃない」とかって出るのがなんだかすごくそわそわする。平静を装え……

「それが今回だったっていうわけかあ」
「ごめんって」
「あっそういうつもりで言ったんじゃないから!」

ほんとに責めるつもりはなかったんだけど、平静を装おうとしすぎて自分が思ってたよりだいぶ拗ねたみたいな口調になってしまった。ミスった……

自動ドアが開いて涼しい空気がわたしたちを包む。
やっぱクーラーが最強ですわ。
そんなことを考えながらデザートコーナーに鎮座していたおいしそうなプリンを発見しお会計に向かう。

「っふふ……」
「今面白いとこあった?」
「名前、私には遠慮するんだなと思って」
「え?」
「あのプリン、ほんとに悟が食べていて名前とここに来たのが悟だったらもっといろいろ詰め込むだろ?」

わたしが夏油くんを好きなの態度でバレるな??と気づいたのはそう言われてからであった。なんとかこの場をやり過ごさないと。

「それは日頃の行いの差かなあ」

この間約0.1秒。
我ながらよく一瞬でそれっぽい言い訳を思いついたなと思う。内心めっちゃヒヤヒヤした。今のわたしすごい女優じゃない?歴史に名を残す名演を披露したな……

プリンをレジに通した後自動ドアが開くと入店のときとは逆にむわっと湿気た暑い空気が襲ってきた。

「これだけ暑いと帰るまでにぬるくなっちゃうね」
「たしかに。寮の冷蔵庫入れてもっかい冷えるの待たなきゃ」

面倒だけどぬるいプリンを食べる方がもっとイヤなのでそこはもうどうしようもない。

「ね、ここで食べて行かない?ゴミ箱もあるし店の前ならたまにクーラーの風が漏れて涼しいし」

一理ある。というか食べ損ねたのもあって正直今めっちゃプリン食べたい欲があるからかなり天才の提案。
お行儀は悪いけど今買ったプリンはここで立ち食いすることにした。

「夏油くんも要る?」
「いや、私はさっき食べたからいいかな」

そういえばわたしのプリン食べたのこの人だったわ。二人きりでコンビニ来てる事実のほうがやばすぎて普通に忘れてた。
でももう最初のプリンとかどうでもよかった。
こうして二人だけで往復20分のデートができたんだからわたし的には寧ろあのプリンが対価でも全然お釣りがくる。
夏油くんに買ってもらったプリンが今のわたしには何よりも美味しく思える。今度またコンビニで見かけたらこれ買おう。
そうやってもう一口、と掬ったプリンはぺしゃりと地面に落ちた。

唇に柔らかい感触、と綺麗な顔

「ごめん、急に甘いのが欲しくなっちゃった。ごちそうさま」


さっきいらないって言ったじゃん!!!


夏油傑とプリン

五条くんへの詫びプリンは当然忘れた