碧落ラストコネクション


するとシアンはソレイユに手招きする。正直怖いし何されるか分からないしで近付きたくないが、逆らうと殺される気がしたソレイユは素直に従う事を選んだ。


「ちょっと脱いでください」

「はァ!?な、何する気だよ!!!」

「あ、如何わしい事じゃないのですよ?上半身だけで結構なのです」


やはり逆らうと怖いのか、ソレイユは渋々マフラーを取り、上の服を脱いだ。マゼンタはそんな彼の意外にも引き締まった上半身をまじまじと見つめる。


「アンタ…ガキの癖に結構イイ体してんのね」

「どっ、どこ見てんだよオバサン!!」


シアンは顔を真っ赤にさせるソレイユを後ろ向きにさせ、背中に手を翳す。
刹那、ビリッと電撃のようなものが身体中を駆け巡った。


「い゙っ…!?」

「はい、完了なのです!」

「な、何したんだよ今…!」


一瞬だけ痛みを感じた背中の中心部を触っても、傷があるわけでもなく、特に何かがある感触は無い。
すると突然、マゼンタがソレイユに鏡を渡した。不思議に思いながら顔の位置まで持ち上げると、鏡越しに背後でサルファーも鏡を持っているのが見えた。

しかし驚いたのは、鏡の中の鏡に映った自分の背中だった。


「な、何だよコレ!?」

「ちょっと“シルシ”をつけました」

「しるし…?」


ソレイユの背中には、黒色で“S”の文字が書かれていた。擦ってみても消えそうにない上に、ザラザラとした感触もまるで無い。
不審に思いながら脱いだ服を着直し、マフラーを巻く。今まで感じていたマゼンタからの視線にも逃れられた。


「この“シルシ”はシアンたちの仲間の証なのです!これからよろしくなのです〜」

「仲間の…って、はァ!?仲間!?」

「今日からソレイユくんは“碧”の一員なのです!」

「なっ…!?」


誘拐したのもこの為かと理解したソレイユはその場から逃げようとする。しかしサルファーに白いマフラーを掴まれ、バランスを崩し後頭部を打ち付けた。
折角さっきたんこぶ無いって分かったのに!!


「どこ行くねん」

「ど、どこって…!逃げるんだよ!!誰がお前らなんかの仲間になるかよ!!」

「……別に逃げる逃げへんはお前の勝手やけど、その“シルシ”がある以上、お前はシアンからは逃げられへんで」


サルファーの言葉を不思議に思いながらも、1秒でも早くここから逃げたかったソレイユはマフラーを外して玄関まで走った。

しかし、ドアノブを掴もうとしていた筈の右手は、そこにいるはずのない人間の手を握っていた。


「おやおやソレイユくんったら握手なのです?な〜んだやる気マンマンじゃないですか〜!!」

「…!?」


シアンはそう言って握られた手を上下にブンブン振る。ソレイユはその事実に驚きを隠せなかった。
マフラーを掴んでいたサルファーよりも遠くにいたシアンが、何故、今目の前にいるのか。先程のサルファーの言葉を思い出して、一気に顔が青ざめる。あの“シルシ”に、呪いでもかかっているのか。

…まさか、本当に逃げられないのか。


「“碧”の法則その1!アジトに帰ってきたら必ず『ただいま』と言うこと!」

「………」


突然放たれた言葉に声が出なくなる。
この組織は本当に犯罪者…それもS級のものか!?


「その2!家事当番は守ること!ちなみに今日の夕食当番はマゼンタなのです!!」


家事を当番制にしてルームシェアする犯罪者は見たことが無い。ソレイユはドヤ顔で説明するシアンにいちいち細かい法則だなと考えていたが、その3つ目に絶望した。


「その3、メンバーから脱退した者は、何があっても殺す」



ソレイユは逃げることを諦めた。


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